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相続3 一度行った遺留分放棄を撤回できますか

遺留分放棄を撤回するためには、家庭裁判所の判断が必要ですが、家庭裁判所に撤回を認めてもらうことはかなり難しいんです。さらに、相続開始後の遺留分放棄の撤回は、ほぼできないと考えてもよいほど難しいと思ってください。

この記事では、一度行った遺留分放棄を撤回できるのか。できるとしたら、どのような場合なのかを解説します。

1.遺留分放棄とは

遺留分とは、法定相続人に認められた最低限の取り分です。

被相続人が相続人の一人のみにすべての遺産を相続させるとの遺言を残していた場合、遺産をもらえなかった相続人は、遺留分を侵害されたものとして、すべての遺産を相続した相続人に遺留分侵害額請求を行うことができます。

これでは、相続人の一人のみにすべての遺産を相続させるという被相続人の希望をかなえることができません。そこで、相続の開始前にあらかじめ、他の相続人に遺留分を放棄してもらうという手段があります。

遺留分の放棄は、被相続人や相続人の間で協議するだけでできるわけではなく、必ず、遺留分を有する相続人(遺留分権利者)が家庭裁判所に申立てを行い、許可を受ける必要があります。(民法1049条)

  • 遺留分放棄が自発的なものであるかどうか
  • 遺留分放棄をする理由に合理性があるか
  • 遺留分放棄の代償が支払われているか

こうした点を考慮したうえで、家庭裁判所が許可すれば、相続開始前に遺留分を放棄することができます。

このように、遺留分放棄は、家庭裁判所の審判手続きにて行われるため、よほどの事情がない限り、遺留分放棄の撤回はありえないことを押さえておきましょう。

2.遺留分放棄の撤回が認められるケース

一旦は、遺留分放棄を申し立てて、家庭裁判所の許可も得たものの、後悔して、遺留分放棄を撤回したくなることもあると思います。

遺留分放棄の撤回は全く認められないわけではなく、認められるケースもあります。

2.1遺留分放棄の許可申立てが遺留分権利者の真意ではなかった場合

遺留分放棄の許可申立ては、遺留分権利者が行ないます。被相続人やその他の相続人が、申し立てるわけではありません。

ところが、遺留分権利者が、被相続人やその他の相続人に騙されたり、無理矢理、家庭裁判所に連れて行かれたりして、遺留分放棄の許可申立てをさせられてしまうことがあります。

このような場合は、遺留分放棄の許可申立てが、遺留分権利者の真意によるものではないため、一旦は、家庭裁判所の許可が出たとしても、撤回が認められる可能性があります。

2.2遺留分放棄許可が出た時点とで事情に変化があった場合

遺留分放棄の許可は、遺留分放棄をする理由に合理性があると家庭裁判所が認めた場合に出されます。

例えば、長男、次男、三男の3人が推定相続人だとして、長男が親の事業を受け継ぐ予定なので、事業に必要な親の遺産全てを長男に相続させる必要があるなら、次男、三男の遺留分放棄を認めることもあります。

ところが、遺留分放棄の許可が出た後で、長男が親の事業を受け継がないことになった場合は、事情に変化があったと言えるので、次男、三男は、遺留分放棄の撤回を認めてもらえる可能性があります。

なお、事情の変化とは、単に事情が変わっただけでなく、遺留分放棄の状態を存続させることが客観的に見て、不合理、不相当であるほどのものでなければならず、簡単に認められるものではないことに注意しましょう。

3.遺留分放棄の撤回を認めてもらうためには

遺留分放棄の撤回を認めてもらうためには、必要書類をそろえて、家庭裁判所に遺留分放棄許可の取り消しを求める申立てを行う必要があります。

申立書のほか、遺留分放棄許可の取り消しを求める事情について、詳細に説明、証明する書類が必要です。

一般の方では、こうした書類を書くことは難しいため、弁護士などの専門家に依頼して説得力のある書類を作成してもらいましょう。

4.遺留分放棄の撤回は相続開始前のみできる

遺留分放棄の撤回は、原則として、相続開始前しか認められていません。

一旦、相続が開始してしまうと、遺言書等により権利関係が確定してしまうため、これを覆しすと、混乱が生じるからです。

家庭裁判所は、「一般論として相続開始後の遺留分放棄許可審判の取消しも許されないものではない」との考え方を取っていますが、相続開始後に遺留分放棄の撤回を認めたケースは、ほとんどありません。

また、遺留分侵害額の請求権自体も、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に権利を行使しないと時効により権利が消滅してしまいます。(民法1048条)

5.遺留分放棄を求められた場合は慎重に考える

一旦、遺留分放棄した場合は、撤回すること自体が難しい上に、相続開始後はほとんど認められません。

そのため、被相続人などから、遺留分放棄を求められた際は、応じるかどうか慎重に判断しなければなりません。

特に次の点を念入りにチェックしてください。

5.1遺留分放棄を求められる事情を理解する

被相続人などが遺留分放棄を求めるのはそれなりの事情があるはずです。

事業資産を後継者に承継させる必要があるというような納得できる理由を聞き出せるかどうかがポイントです。

5.2遺留分放棄の代償をもらう

遺留分権利者による遺留分放棄に際しては、経済的価値のある代償が必要です。

具体的には、遺留分を放棄する代わりに、何らかの贈与を受ける形になりますが、その経済価値が放棄する遺留分に見合うものなのかどうかをよく検討することが大切です。

6.遺留分放棄を求められたら、まず、弁護士などの専門家に相談しよう

遺留分放棄は、家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申立てを行い、審判によって許可されるものなので、遺留分放棄が妥当かどうかは、家庭裁判所が慎重に判断します。

しかし、家庭裁判所でも、遺留分権利者の真意によるものなのかや、詳細な事情まで踏み込んで判断していないこともあります。

やはり、家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申立てを行う前に、本当に遺留分放棄をしてよいのか、弁護士などに相談することが大切です。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。