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遺留分を侵害されたので何とかしたい【解決事例紹介】

「◯◯に全部遺産を相続させる」という遺言が見つかった……。遺産を受け取ることができない法定相続人にとってはショックが大きい状況だと思います。
しかし、だからといって「一銭も遺産を受け取れないのか」というとそうではありません。
兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」として最低限の遺産を受け取る権利が認められているからです。今回は、遺留分を侵害された場合の対応について、実在の解決事例をベースに解説します。

事例

私は3人姉妹の長女です。ひとり暮らしをしていた母親が亡くなり、相続が起きました。母は遺言を残していましたが、その内容が「妹Aに遺産を全部」という内容で困惑しています。さらに、相続財産の中には先祖代々の不動産が含まれているのですが、妹は遺言があることをいいことに登記を妹名義に移して売却しようとしているようです。
私としては勝手な売却は許せないし、遺産ももらいたいと思っています。どうすればいいでしょうか。

遺留分を侵害された場合の戦い方

ー「妹に遺産を全部」ですか。なかなか相談者さんにとっては、厳しい内容の遺言が出てきてしまいましたね。

そうですね。この場合、「遺留分を侵害された」ということで、遺留分を妹さんに請求することになると思います。

ー遺留分ですか?

遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められた、最低限の遺産をもらう権利です。遺留分を侵害された場合は、遺留分を侵害している人――今回は妹さんに、遺留分侵害に相当する金額の金銭を請求することができます。

ーなるほど。遺留分ってどんな風に計算するのでしょうか?

それについては、民法1042条で決められています。子どもが相続人になっている場合は、法定相続分の1/2が遺留分になります。

ー今回は相続人が3人ですから、1/2×1/3=1/6が相談者さんの遺留分になりますね。

そうですね。したがって、相談者さんには、「遺留分の算定をするための基準となる財産」の金額に、1/6をかけた分に相当する金額の金銭を受け取る権利があるということになります。

-「遺留分の算定をするための基準となる財産」ですか。また、ややこしいキーワードが出てきてしまいましたが……。

簡単に言うと、<相続時に残っていた遺産の金額+本人が生前に贈与で誰かにあげた金額-本人の債務・借金>です。ここでいう贈与は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っている贈与、相続開始前1年以内に行った生前贈与、そして相続開始前10年以内に相続人に対して婚姻もしくは養子縁組のため又は生計の資本のために行った贈与を指します。

ー贈与の扱いが難しいですね。あげた・あげないをめぐってモメそうな気がします。

このあたりは実務でも問題になりますね。贈与がいくらかをめぐって争いになるケースはありますよ。また、遺産の中に不動産がある場合は、不動産の価値をめぐっても争いになります。

ー遺留分の金額にダイレクトに影響しますものね。ちなみに、計算してみた結果「遺留分があるよ」となった場合、相手に請求すればすんなり払ってもらえるものなのでしょうか。

法律で認められた権利ですからね。請求された側は払わないといけないということになります。

ーなるほど。請求すれば、遺留分だけでも確保できる可能性が高いんですね。安心しました!

遺産の中に不動産がある場合は財産を処分されるリスクが

残念ながら、今回ご紹介した解決事例では、すんなりはらってくれそうにもないケースでした。
というのも、相続が起きてすぐに、相続財産に含まれていた不動産を妹さんが売ろうとする動きがあったんです。

ーええっ……。遺留分の話も含め、まだ相続の話し合いは終わっていないのに。

遺言があれば不動産の登記名義は妹さん1人で移せますから。このままだと勝手に売却されてしまうかもしれないし、誰にもそれを止められない。そこで、困った相談者の方が私のところに相談に来られたという経緯がありました。

ーなるほど。不動産を売られて現金化されてしまうと、どんな不都合があるのでしょうか。

そうですね。今回ご紹介した事例の場合は、「先祖代々の不動産を勝手に売られたくない」という理由が大きかったんですが、一般的には不動産を売って現金化されると、財産隠しのリスクが高まるといわれていますね。相手方が任意にお金を支払ってくれない場合、強制執行で回収することになります。ところが、相手方に財産をうまく隠されて、手元には1円もないという状態になってしまうと、強制執行を申し立てても回収できません。

ーそれは怖いですね。

はい。だから今回のような遺留分を争う場合も、場合によっては財産を処分されないように先手を打っておく必要があります。具体的な手段としては、不動産や預貯金の仮差押が考えられます。担保(保証金)などの負担はありますが、仮差押が認められると勝手に財産を処分できなくなります。「不動産を売られたくない」などの事情がある場合には有効な手段といえるでしょう。実際の事件では、相手方から保全取消申立がなされたものの、その後の手続きの中で和解が成立しました。保全事件がきっかけで早期解決に至った事例だと思います。

ーそういった実務の話も考えると、相続トラブルは早めに弁護士に相談したほうがいいですね。

遺言が書かれたシチュエーションが怪しい場合は遺言無効も争う

ーその他、遺留分を争う場合にポイントになることはありますか?

そうですね。まず先ほども紹介したように、相続財産に不動産が含まれていたりする場合は、「遺留分の金額がいったいいくらなのか」というのが争点になります。遺留分に配慮された遺言があった場合でも、不動産の評価額に関する遺言の記載内容次第で遺留分が発生してしまうことがあります。

ーこれはどちらの当事者も譲れないですね。いくらもらえるのか、逆にいくら支払わなければならないのか、結論が大きく分かれるポイントになりそうです。

そうですね。当事者同士の話し合いで折り合うのは難しいポイントだと思いますので、早めに相談に来ていただきたいですね。
また、遺言が書かれた状況に関して怪しい点がある場合には、そもそも遺言の有効・無効を争わなければならないこともあります。故人が認知症にかかっていたなどの事情がある場合は、合わせてご相談いただけるといいですね。

弁護士からひとこと

遺留分の請求には1年の期間制限があるため、早めに行動しないと請求できなくなる可能性があります。場合によっては財産を保全する必要もありますので、状況に応じた対応が早期解決するためのポイントです。
そのほか、遺留分を請求する場合、遺留分の計算や遺言書の有効性の検討、相手との交渉などが必要になってきます。なかには専門的な知識や経験が求められる手続きもあり、一般の方には難しいところがあるかもしれません。
遺留分の請求は時間との戦いです。問題のある遺言が出てきた時点で、できるだけ早めに相談していただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。