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遺言執行者に選ばれてしまったら何をすればいい?【弁護士解説】

遺言の中で、「遺言執行者」なる存在が指定されていることがあります。遺言執行者は、その名のとおり「遺言の内容を執行する」人であり、相続に関わるさまざまな手続きを相続人に代わって進めていきます。一般的には弁護士が指名されるケースが多いのですが、最近では相続人が選ばれることも増えてきました。
しかし、遺言執行者の仕事には法的な手続きも含まれるため、一般の方には難しい部分があることも……。
そこで、今回は、遺言執行者に選ばれた場合にやるべきことや遺言執行者がいる場合における相続の手続きについて紹介します。

事例

先日、父が亡くなりました。葬儀が終わってしばらくした後に公証役場に問い合わせたところ、父親が作成した公正証書遺言があることがわかりました。先日、その内容を確認したところ、自分が「遺言執行者」なるものに指定されているようです。
この後、相続の手続きはどう進めればいいのでしょうか?

そもそも遺言執行者とは

ー今回、遺言で「遺言執行者」というものが指定されているようですが、そもそもどんな仕事をする人なのでしょうか?

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。
弁護士が指定される場合も多いのですが、最近では今回の事例のように相続人のひとりが指定されるケースも増えていますね。法律の専門家でも相続人でもないという方が指定される場合は珍しいかもしれません。

ーなるほど……今回のように相続人が遺言執行者になることも結構あるんですね。遺言執行者を指定するメリットとしてはどんなものがあるのでしょうか?

まず、遺言を書く本人にとっては、遺言の内容を円滑に実行してもらえる、というメリットがあります。第三者への遺贈のように、相続人が手続きに協力してくれないような手続きもありますから。一方、相続人側のメリットとしては、相続の手続きがラクになるということが考えられます。通常、遺言執行者には、預貯金の解約の権限や不動産の名義変更の権限が与えられていますので、遺言執行者が解約や名義変更の手続をすれば相続の手続は完了です。たとえば、遺言書があって預貯金の解約をする場合、相続人全員のハンコが必要になることも多いのですが、遺言執行者がいればその人ひとりで解約の手続きができてしまうんです。、

ーそれは楽ですね。相続人としては、ほぼ手続きを遺言執行者にお任せしてしまえばいいというか。

一般論としてはそうですね。

ー裏を返せば、相続人に代わっていろんな法的な手続きを遺言執行者はしなければならないということですよね。弁護士の先生ならともかく、一般の方が遺言執行者になろうとすると、手続き面についてはわからないことだらけになりそう、というより、なかなかハードルが高いように思うんですが……。自分が指定されたのはわかったけど、「いったい何をすればいいの」と。

そうですね。相続人の方が遺言執行者になっているような場合だと、戸惑うこともあるかもしれませんね。ちなみに、遺言執行者に指定された場合も、必ず遺言執行者にならなければならないというわけではないんです。指定される側には就任を断ることもできます。

ーなるほど……嫌なら引き受けなくてもいいんですね。

遺言執行者になってしまったら何をすればいい?

ー実際に遺言執行者が指定されていた場合、相続人や遺言執行者は具体的に何をすればいいのでしょうか。

遺言執行者が指定されている場合、遺言があることが前提になります。相続人以外の人が遺言執行者になっている場合、遺言執行者は遺言を書いた方が亡くなったことを知りません。ですから、相続人の方には遺言執行者に連絡を取ってもらう必要があります。また、自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認の手続きも必要です。
ここまでが、ひとまず相続人がやるべき手続きですね。その後は遺言執行者にバトンが移ります。まず遺言執行者になるかどうかを決めて、もし「なる」と決めたら、法律で決められたルールも見ながら相続の手続きを進めていくことになりますね。

遺言の内容を確認する

ーまずは何から手をつければいいのでしょうか?

まず遺言が有効なものかどうかを確認する必要がありますね。自筆証書遺言の場合は、形式不備で無効になってしまうことがありますので。一方、公正証書遺言であれば、一応有効であるという前提で話を進めても大丈夫です。

ー自筆証書遺言の場合は大変ですね。

そうですね。少なくとも、本文・日付は手書き、署名・押印が必要など、細かくルールが決まっていますから。また、遺言に形式面の問題がなかったとしても、明確に書かれていないために解釈が難しい場合もあります。
このあたりは一般の方だと判断が難しいところですので、もし不安な場合はこの時点で弁護士にご相談いただくのがいいかもしれませんね。

ーなるほど…。一般の方だと判断が難しいポイントが出てくる可能性があるということですね。

相続人の調査・財産調査

遺言の内容を確認したら、今度は相続人の調査をしないといけません。被相続人の戸籍をたどって誰が相続人になっているのかを調べます。相続人がわかったら、その方たちに遺言執行者になった旨を連絡します。その際、就任のお知らせとともに遺言のコピーを送付することが多いですね。

ー戸籍の関係を調べるところから始まるんですね。

そうですね。戸籍を調べているうちに思わぬ相続人が現れることもあります。思い込みで相続の手続きを進めると失敗するおそれがありますので、きちんと戸籍を調べないといけません。相続人がわかったら、今度は財産調査と遺産目録の作成です。何が相続財産なのかを調べて、遺産の目録を作ります。

ー財産調査って、一般の方でもできるものなのですか?

遺言執行者の場合、貸金庫を開けたり通帳を引き渡してもらったりと自分ひとりでできることは多い反面、あちこち金融機関などを調べて遺産目録を作るとなると、一般の方は大変かもしれませんね。

財産の処分・経費などの精算

ー遺産目録を作ったあとは何をすればいいのでしょうか?

遺言に従って、遺産を処分していきます。不動産や株式の名義を移転したり、預貯金を解約したりといった感じですね。遺言の内容によっては、不動産・株式を売って現金化することもあります。長期にわたって遺産の管理を求められる場合はあまり多くないですね。

ー遺言どおり遺産を分配するための準備作業を淡々と進めていくと。

そういうイメージですね。その作業が終わったら必要な費用や報酬を遺産から差し引く形で精算して、残った財産を遺言の内容通り相続人に引き渡します。これで、遺言執行者の仕事は終わりです。
ただ、遺言の内容によっては、遺産の分け方などをめぐってまた難しい問題が出てきてしまうこともあるんですよね。
特に、相続人が遺言の無効を主張している場合などは、遺言執行をそのまま継続していいのかどうかなど、弁護士であってもどのような方針にするか悩ましいところです。強引に作業を進めてしまうとあとで責任問題になってしまうリスクもありますので、わからないことがあったら一度弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士からひとこと

遺言執行者の仕事をしている際、一般の方では対応に困る場面が出てくることがあります。遺言の無効が問題になる可能性があるときなど、自己の判断で相続の手続きを押し進めてしまうとあとでトラブルになる可能性も捨てきれません。
遺言執行者の職務にあたっては、財産の調査、法的な問題が起きたときの対応など弁護士がお力になれる場面も多々あります。もし困ったことがありましたら一度ご相談いただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。