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遺産分割調停って意外と大変?思わぬ落とし穴も【弁護士解説】

当事者同士の話し合いで相続トラブルが解決できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停で話し合いが続けられることになります。ここでは、事例を使いながら、家庭裁判所の遺産分割調停の手続きや終わるまでの期間、手続きから抜ける方法などについて解説します。

事例

私は四人兄弟の末っ子です。先日、一人暮らしをしていた父親が亡くなり、相続が起きました。相続人は子ども4人ですが、長兄と長姉が対立しており遺産分割協議がまとまりそうにありません。このままだと調停というものをやることになるそうですが、いったんどんな手続きをすればいいのでしょうか。また、私としては、兄弟の誰ともケンカをしたくないと考えており、正直手続きに参加するのも億劫です。
もし調停することになった場合、手続きはどんなふうに進みますか? また、手続きから抜けるためにはどんな方法がありますか?

遺産分割協議がまとまらない場合の相続

ー今回の事例のようなケースだと、当事者の話し合いで解決するのは難しそうですね。

そうですね。不動産の評価額の問題もありますし、相続人間で意見対立がありますので。このまま当事者で話し合っても話し合いが平行線になってしまうと思います。そうすると、家庭裁判所の調停に持っていくしかありません。

ー調停ですか。今回の相談者さんのように「自分はケンカするつもりはないので、調停は他の人たちで勝手にやってほしい」という場合はどうすればいいんでしょうか?

調停は相続人全員参加で行われるものなので、自分が相続分を持っている限りは参加せざるを得ません。「どうしても手続きから離脱したい」というのであれば、相続放棄の手続をして「あとは残った人たちで勝手にやってくれ」とすることもできます。
債務を相続するリスクを考えると相続放棄ができれば一番望ましいのですが、遺産分割協議がまとまらなかった時点で3ヶ月経っているケースが多いと思います。その場合には、相続分の譲渡や相続分の譲渡をするしかありません。今回のケースのように、法定相続分を主張するつもりもないというのであれば、争いごとに巻き込まれる前に相続放棄の手続をすることも検討するべきでしょうね。

ー相続放棄をしてでも、「イチ抜けた」することにはどんなメリットがあるのでしょうか? もちろん争いに巻き込まれなくて済むというのはあると思うんですけど……。

それもありますし、よけいな時間が取られなくて済む、というのが大きいと思いますよ。というのも、話し合いがまとまらなかった場合は調停するしかないわけですが、遺産分割調停の手続きは当事者にそれなりに負担がかかるものなんです。特に連絡がつきにくい人や音信不通の人がいる場合や関係者の人数が多い場合は大変です。

遺産分割調停の実際

ーもし調停になってしまった場合、どんな感じで手続きが進むことになるのでしょうか?

調停の申し立てがあると、まず相続人全員が期日に家庭裁判所に呼び出されます。家庭裁判所に出頭すると、1人ずつ(複数人まとめての場合もありますが)交互に呼び出されて、調停委員にそれぞれの言い分を聞いてもらうことになります。交互面接方式というんですが、話を聞くのに1人あたり20分を目安とすることになっていますので、当事者が4人であれば、20分×4で80分です。

ー待ち時間が長いですね……。

そうですね。実際には20分では終わらずに1人当たり30分以上かかることもあります。さらに、調停委員会の中での意見調整に時間がかかるケースもあります。調停の進行役である調停委員会は3人構成で、1人が裁判官、あとの2人が人生経験豊富な有識者である調停委員となっています。ちなみに調停委員は基本的には男女1組です。

ー構成的に、全員男性、全員女性というのはありえないようになっているんですね。ただ、有識者というところが引っかかります。調停委員って法律のプロではないんですか。

必ずしもそうとは限らないんですよね。弁護士や司法書士が調停委員になっていることもありますが、地元の名士がなっているようなケースもありますので。調停委員会には裁判官も入っていますが、裁判官が出てくるのは、ほとんどの場合調停の最後の期日だけです。

ーそうなんですね!?

もちろん内部では、裁判官と調停委員とがいろいろ打ち合わせをしていると思いますので、そこまで不安に思う必要はないと思います。実際、面接が終わってから、調停委員の方が「裁判官に相談してきますね」と、いったん待たされることはよくあります。このように、どうしても、調停1回あたりの所要時間が伸びてしまうのも否定はできないんですよね……。

ーなるほど。拘束時間が相当長くなりそうですね。しかも、これが何回かあるわけですよね。

そうですね。調停はおおよそ1ヶ月~2ヶ月に1回のペースで開かれるのが一般的ですが、2、3回で終わることは少ないと思います。どんなに簡単な事件でも最低でも半年はかかります。場合によっては数年ということもあります。

ーそこまでやっても話し合いがまとまるとは限らないんですよね。

ええ、決裂した場合には審判に移行します。そうなるとまた1~2年かかる可能性がありますよね。実際、故人が亡くなってから10年以上争っているようなケースもありますよ。

ー大変なケースもあるんですね。ちなみに調停で解決できるケースって、体感的にどれくらいでしょうか。
遺産分割の場合は、ほとんどの事件が調停で解決できています。

ー審判までいくことはあまりない?

はい。相続財産の中に不動産がある場合、審判に行くと不動産が競売となってしまうリスクがありますから。「競売よりは任意売却したほうが得」ということで、審判になる前に妥協できるケースが多いように思いますね。

ーほとんど調停で解決できるんですね。安心しました。使い込みや遺留分が問題になっているケースはどうでしょうか?

使い込みや遺留分の問題については少し事情が異なります。というのも、使い込みや遺留分に関する判断を裁判官にしてもらうためには、地方裁判所に対して訴訟を起こす必要があるんですよ。

ーそもそも家庭裁判所の調停では解決できない問題ということでしょうか?

そうですね。それほど揉めていないケースであれば、家庭裁判所の調停の中でまとめて解決できることもありますが。キチンと解決することを目指すのであれば、地方裁判所での訴訟が必要です。

調停をスムーズに進めるポイント

ー調停の手続きをスムーズに進めるためのポイントはありますか?

できれば弁護士についてもらうのがいいと思いますね。家庭裁判所に対して自分の言い分をキチンと伝えるためには、弁護士の役割はとても重要です。例えば、情に訴えかけたり、以前の別の相続の件の不満を持ち出す人もいますが、そういう話を調停委員が受けとめてくれるわけでもなく、調停が紛糾してなかなか解決に近づかないこともあります。

ーなるほど。

あと、現状の制度だと、調停を申し立てた場合、申立人対相手方の構図になるんですよね。誰がどっち側の人間になるのか、という最初の振り分けがまず難しいんですよ。戦いを有利に進めるためには、ここで頭を使わないといけません。また、持っている相続分が大きくなればなるほど話し合いの場における交渉力が高まるので、そのあたりの駆け引きの問題もあります。こうした判断は一般の方には難しいかなと思います。

ー本人だけで調停をすることは難しいのでしょうか?

本人だけでやっていらっしゃる方もいます。ただ、調停の場では法的な主張をしないといけないので、弁護士がいたほうが調停がスムーズに進むという側面はあると思いますね。

弁護士からひとこと

遺産分割調停の場では法律的な主張をする必要があります。さらに、相手との交渉という側面もありますので、本人がひとりで進めるのは難しい部分もあるかもしれません。もし不安なことがありましたら、一度ご相談に来ていただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。