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介護を頑張ったことは相続に関係しますか?

家族のひとりに介護が必要になった場合、特定の人に介護の負担が集中してしまうことがあります。
昔と比べて介護サービスなども充実している状況ではありますが、それでも「介護は大変だ」「苦労している」と感じている方もいるのではないでしょうか。
そこでよくあるのが、「介護をがんばったから遺産が多く欲しい」という相談です。
たしかに金銭的に報われるのであれば、モチベーションが上がって大変な介護も頑張れるということもあるかもしれません。
しかし、法律的にこうした主張は通るのでしょうか。
事例を見ながら考えてみましょう。
 

事例

私(A)は3人兄妹の長兄であり、これまで年老いた母親と同居し、面倒を見てきました。
なお、父親は10年前に亡くなっています。
 
母親は年々身体が弱って、亡くなる2年前には介護が必要な状態になりました。
その折にガンで余命半年の宣告を受けていた事情もあったため、施設などには入れず、最後は自宅で看取ることに決めました。
それからは妻B、近くに住む妹Cの協力も得て、3人で介護を頑張り、その結果穏やかに母親を見送ることができました。
 
なお、弟Dは遠方に住んでおり、母親の介護に関してはときどきお見舞いに来るくらいの関わりしかありませんでした。
 
ところが、いざ相続が始まるとBは「兄貴は長男で昔から贔屓されていたし、Cは「末っ子だから」と結婚する際にだいぶ出してもらったじゃないか。
オレにも法定相続分くらいはもらう権利がある」と言い出し、譲りません。
 
私としてはDには多少遠慮してほしいと思っているのですが、私の言い分は通るのでしょうか?
 

Q:介護を頑張った人が多めに遺産をもらうことはできるのか?

A:介護を頑張ったということだけで多めに遺産をもらうことは難しいですが、介護の程度や期間、介護によって本人の財産を維持できたかどうかという事情次第で、寄与分が認められます。
 

介護をした家族が遺産を多くもらうには

さまざまな事情から、本人と同居・近居している家族が介護の主な担い手になるケースがあります。
 
しかし、本人の病状・障害の程度にもよりますが、介護には精神的・肉体的な負担がつきものです。
 
「介護をがんばったから、相続では配慮してほしい」というご家族のお気持ちはよくわかりますし、実際にそうした相談はよくあります。
 
しかし、残念ながら、介護をがんばったというだけで、遺産を多くもらえるわけではありません。
 
遺言がないのであれば、基本的には法定相続分で遺産を分けることになります。
 
相続人全員で意見が一致した場合は法定相続分と違った割合で分けることもできるのですが、今回のケースでは、法定相続分を主張する方がいるので、原則としては、法定相続分で分けるという結論になると思われます。
 

寄与分の請求がハードルが高いといわれる理由

生前の本人が家族の介護を受けていた場合、寄与分が問題になることがあります。
 
寄与分は、故人の財産の増加・維持に関して特別の貢献をした相続人がいる場合に、その人が多く財産をもらえるようにするという制度です。
無休で家業の手伝いをしていたり、献身的に自宅で介護を行っていたりしていたようなケースが典型例といわれています。
 
そのため、「介護をがんばると、寄与分がもらえるのでは」と考える方も少なくありません。
 
ただし、寄与分が認められるためには、本人の財産に寄与したという具体的な事実を証明しなければなりません。
 

資料がそろっていないケースが多い

ありがちなパターンの1つに、必要な資料がそろっていないというケースがあげられます。
 
寄与分が認められるためには、請求する人の貢献によって、どれだけ故人の財産にプラスの影響があったのかを明らかにしなければなりません。
 
そのため、家族の介護や看護によって、いくらの金額が節約できたのかを具体的に計算した上で寄与分を算出する必要があります。
 
そこで必要とされるのが、医師のカルテや「どんな介護をどの程度やったのか」を記した日誌等です。
 
しかし、介護や看護に追われる生活の中で、日誌等をつけるのは簡単なことではありません。
また、そもそも介護をしている本人の記憶が曖昧になっているという場合もありえます。
 
記録が残っておらず、記憶も曖昧ということになってしまいますと、事実関係の立証ができずに諦めるということにもなりかねません。
 

金額的なインパクトに乏しい

もうひとつ寄与分をめぐっては、苦労して膨大な証拠を整理して主張しても、それに見合った経済的メリットがそこまで大きくないのでは、という問題もあります。
 
たしかに過去の裁判例では、6年で1200万円、11年で2800万円といった高額の寄与分が認められたケースもあります。
 
しかし、これらはどちらかというと例外的なケースです。
寝たきりの方を夜通し看護していたといった事情がある場合は別として、10年間の介護で数百万円くらいの寄与分しか認められないことも珍しくありません。
 

遺言を書いてもらうのがベスト

寄与分という制度は一応存在しているものの、実際に活用するにはハードルが高いというのが実情かもしれません。
 
そのため、「もし介護をした人に遺産を多く」というのであれば、本人にその旨の遺言を書いてもらうのがベストだと思われます。
 
そして、財産の状況や介護の主な担い手は年月の経過と共に変わるものです。
介護が本格的に始まる前に遺言を書いてしまうと、現時点で自分の面倒を見てくれている人と、実際に献身的な介護をしてくれた人がずれてしまう可能性もあります。
そこで、遺言については、絶えず見直しておくことが重要です。
 
また、本人に書き換えるつもりがあったとしても、高齢の方の場合、書き換えようと思っているうちに亡くなってしまう……ということも起こりがちです。
 
遺言については、「思い立ったらその日のうちに書く」が鉄則です。
 
できれば、本人が比較的元気なうちから家族間で財産の状況や相続について話し合っておき、遺言をこまめに書き直すことについて本人の理解を得ておくとよいのではないかと思います。
 

「争続」を予防したいなら財産管理もきっちりと

特定の家族が本人の生活の世話や介護を担当する場合、財産管理の問題も別途発生します。
たとえば、本人のための介護費用などを本人の代わりに支出した場合、相続のタイミングで立て替えた分を返してほしい、清算したいと思う人も多いと思います。
しかし、その際に領収書等がなければ、「本人のためにいくら支払った」ということが証明できず、清算しようにも清算できないかもしれません。
 
本人の面倒を見ていた相続人とそのほかの相続人が、「生前の本人の財産管理が適切に行われていたか」をめぐって争うケースというのは非常によくあります。
 
事情があって本人のために支出を行ったり、本人の財産管理を行うことになったりした場合、領収書を保管する、現金出納帳をつけるなどして誰が見てもお金の動きが明確にわかるようにしておくのが無難です。
 

弁護士からのアドバイス

本人の死後に実際に寄与分を請求しようとしても寄与した事実の証明ができるとは限りません。
そうであれば、まずは本人が存命のうちに生前贈与や遺言で手当してもらうというのが現実的な対策と思われます。
 
また、一度書いた遺言を放置しておくことにもそれなりにリスクはありますので、遺言については絶えず見直しておくことが重要です。
 
これに加えて、自分で財産管理ができなくなってきたら、身近な親族に管理を任せるのではなく、弁護士などの第三者の専門家に任せることも検討が必要です。
 
死後に相続人間で大きな紛争にならないよう、「なんとかなるだろう」という思い込みはやめて、周到かつ綿密な準備をしておきましょう。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。