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老後の財産管理~高齢化社会で安心して生活するために

長生きされる方が増える中、老後の財産管理に不安を感じる方も増えています。
将来身体が弱り、あるいは認知症になったりした場合にどう備えればいいのか。
今回は、老後の「万が一の事態」に備えるためにやるべき対策についてご紹介します。
 

高齢化社会ならではの老後リスクとは

高齢化社会になりつつあるといわれている日本。
男女ともに平均寿命が伸び、100歳の誕生日を迎えられる方も増えてきました。
2021年9月14日に発表されたデータによれば、100歳以上の高齢者はなんと8万6510人もいるそうです。
昭和56年で1000人超、平成10年に1万人長、平成24年で5万人超だったことを考えると、この10年で急速に増えていることがわかります。
 
しかし、人々の寿命が伸び、長生きする方が増える一方、問題になっているのが健康寿命です。
健康に生きられる健康寿命と実際に寿命を迎えるまでの期間には大きなギャップがあり、そのギャップは医療が発達した今でも埋められていません。
 
むしろ寿命が長くなったことで、健康を失い、自立できない状態で長期間生活せざるを得ない高齢者の方も増えてきました。
 
長生きすることが幸せとは限らない時代になってきたのです。
 
平均寿命が伸びたことで、認知症になるリスクや認知症のまま生きる時間が長くなるリスクは増大していますし、そうでなくても寝たきりになるなどして日常生活をひとりでは送れなくなるリスクは存在します。
 
そういった「万が一の事態」が起きた場合に問題になるのが、財産の管理です。
 
ひとりで銀行に行けなくなったり、お金の管理ができなくなったりした場合に、自分の生活や財産をどう守っていけばいいのか……。
 
もしかしたら、「そんなことは考えたことがない」という方もいるかもしれません。
しかし、こうしたお金の管理の問題を「なんとかなるさ」と成り行きに任せてしまうのは危険です。
相続時に争いになるなど、家族間のトラブルにつながる可能性もあります。
 
家族の平和、そして自分の老後の生活を守るためにも一度、真剣に「万が一の事態」について考えてみませんか?
 

老後の財産管理、どうするのが安心?

とはいえ、「寝たきりや認知症で銀行に行けなくなる可能性があることはわかったけど、老後の財産管理って何をすれば安心なの?」という人もいるでしょう。
 
むしろ、自分が将来動けなくなるリスクがあることすら考えたことがないという人が大変ではないでしょうか。
 
その結果、起こりがちなのが「ただ時間だけが過ぎていき、何も手を打てないまま財産管理ができない状態になってしまう」という事態です。
 
実務上よく見られるのは、「自分で何もできなくなってから入院して、子どものひとりにキャッシュカードを渡して……」というパターンでしょうか。
 
これは実は非常に危険なパターンで、将来かなりの確率で相続トラブルや使途不明金の問題に発展します。
 
人は誰もが老い、心身が衰えていくものです。
だからこそ「自分だけは大丈夫」と思わず、元気なうちに打てる手をきちんと打っておくことが重要です。
 
老後の「万が一の事態」に役立つ手段としては、次のようなものがあげられます。
 

任意後見

任意後見は、認知症になるなどして判断力が低下したときに備えて、あらかじめ後見人となる予定の人と任意後見契約を結んでおくというものです。
 
後見人となる人を新しく選ぶ必要がなく、自分の信頼している人を後見人にできるので、認知症になってからスムーズに手続きが進められるというメリットがあります。
 
家裁が選任した任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックしているため、不正が起きにくいというのも安心材料かもしれません。
 
もっとも後見契約には、いよいよ判断能力が低下したタイミングではないと使えない、柔軟な対応が難しいといったデメリットもあります。
 

財産管理契約

後見契約の手前の段階で使える対策としては、財産管理契約というものも考えられます。
 
財産管理契約は、その名の通り信頼できる親族や第三者に財産を管理してもらう契約です。
契約なので、嫌になったらいつでもやめられるというメリットがあります。
 
この財産管理契約が特に効果的なのは、相続人になりそうな家族・親族が複数人いる場合です。
 
こうしたケースでよくあるのが、認知症や寝たきりになったあと、近くにいる子ども(親族)にキャッシュカードなどを渡して財産の管理をお願いするパターン……なのですが、実はこのパターンは弁護士の目から見ると非常に危険です。
 
「財産を使い込んでいたのではないか?」と他の相続人から疑いの目を向けられやすく、相続時にトラブルになる可能性があるからです。
 
だからこそ、こうしたケースでは身近な親族ではなくて、弁護士のような信頼できる第三者に財産を託すことも検討する必要があります。
 
たとえば弁護士のような第三者と財産管理契約を結んだ場合、弁護士に財産管理を委託した段階で財産の状況がフルオープンにされるため、家族も納得しやすい傾向があります。
 
財産自体は本人名義のままですので勝手に処分されたら終わりというところもありますが、実際は弁護士が間に入ることで抑止力が働くため、比較的トラブルは起きにくいです。
 
逆に、子どもが1人しかいないような場合では、財産管理契約までは必要ないかもしれません。
事実上管理していても、比較的トラブルが起きにくいといえるからです。
 

信託

財産管理契約以外には、信託という方法もあります。
 
信託のメリットは財産の名義が財産の管理者に移るため、本人が勝手に処分できなくなることです。
そのため、誰かにそそのかされて、財産をだまし取られるなどの事故は起きにくくなります。
 
本人は財産から発生する収益を受け取り、財産の管理は元気な人に任せる、ということで安定的な財産管理の実現が可能です。
 
もっとも、信託の場合、財産の名義が財産を管理を任せた人に移転します。
そのため、子どものひとりに財産を移すとなると、他の子どもとの関係でもめる可能性は否定できません。
 
信託、特に家族信託のデメリットは、財産の名義が移転するため悪用されるリスクが大きいことです。
 
最近では家族信託を悪用して老齢の親を囲い込むというケースも出てきており、弁護士自身も実際そうしたケースを体験しています。
今後信託をめぐる相続トラブルは増加するのではないか、と個人的には予想しています。
 
トラブルを防ぐためには、家族ではなく、費用はかかっても信託銀行をはじめとする第三者にお願いするという方法も考えられるところです。
 

まずは財産の内容を把握して遺言を

ここまで、認知症や寝たきりといった万が一の事態に備えるためのさまざまな方法について紹介してきましたが、実はそれよりも先にやるべきことがあります。
 
それが、今ある財産の内容を調べて遺言を書くことです。
 
今どんな財産があるのかわからなければ財産管理を適切に行うのは難しいですし、遺言がないと、財産管理をきちんと行ったとしてもあとで相続トラブルが起きる可能性があるからです。
 
「遺言なんて今書かなくても」と考える方が多いのですが、先延ばしにすると面倒になり、結局書かずに終わってしまいがちです。
 
今すぐに紙とペン、印鑑を用意して、簡単なものでもよいので書き始めることをおすすめします。
 

元気なうちに対策を

相続や財産管理については「うちは大丈夫」と思っている人が大半です。
第三者にお金を払って財産を管理してもらったり、遺言を早い段階から用意したりすることに抵抗感がある方もいるのでしょう。
 
しかし、弁護士の視点から見ると、どんな家庭にも財産をめぐるトラブルのリスクはあるものです。
 
相続を「争族」にしないためにも、元気なうちに、遺言を書く、場合によっては第三者に財産管理契約や信託で財産管理を委託する、といった対策を検討することをおすすめします。
 
なお、財産の内容によって相続に必要な手続きやトラブル防止に効果的な対策は異なります。
もしわからないことや不安なことがありましたら、気軽にご相談いただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。