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遺言の保存は誰に依頼すべきか

遺言書が作成された後、どのように保存すればいいでしょうか。生前に見つかって開封されたり、破棄・隠匿・変造などの不正行為をされたりする可能性もあり、できれば見つかりにくい場所を探す方もいらっしゃるでしょう。しかし、せっかく作成した遺言書が相続人によって発見されなければ遺言は活用されず、徒労に終わってしまいます。

そこで、遺言書を第三者に保存を依頼し、遺言書の存在を知ってもらうことが大切です。ここでは、遺言書の保存を誰に依頼するべきか詳しくご紹介します。
 

遺言書を預ける必要性

遺言書を作成したのであれば、相続が発生した時にぜひ活用してほしいと思うのは当然のことです。生前のうちに遺言者にしかわからない場所に保管して、誰にも見つからなければ開封される心配はありません。しかし、誰にも見つからないまま遺産分割協議が始まってしまったら、希望通りの遺産分けができなくなるというデメリットがあります。

相続発生から遺産分割協議前に遺言書が発見されれば理想ですが、相続開始前に見つかったり、あるいは協議終了後に発見されたりすると相続人間で混乱をきたすおそれもあります。

そこで遺言書の保管を第三者に預けることも選択肢の一つになります。ただ、預ける相手を間違えると遺言書を破棄・隠匿・偽造などの不正がなされるリスクもあるので、保存を依頼する相手は慎重に選ばなければなりません。
 

遺言書保管の依頼先

では、遺言書の保管の依頼先とそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
 

①相続人

相続が発生した時に確実に遺言書を活用してもらえる上に、信頼できる親族に預けることで何よりも安心感があります。しかし、相続人にとっては自分がどれくらいの遺産を受け取れるのか気になるかもしれません。不正が行われる可能性があることはもちろん、預けた相続人にとって有利な遺言書だった場合、他の相続人から「本当に有効な遺言書なのか」と疑われる事態にもなりかねないので、あまりおすすめはしません。
 

②相続人以外の第三者

相続人間の公平性を保つために、相続人以外の第三者に預けることもできます。相続開始まで遺言書を開封しないこと、尚且つ相続開始後に遺言の存在を知らせることができる第三者を見つけることが重要となります。
 

相続人でない親戚や知人など

相続人以外の親戚(おじ、おば、甥姪など)、親しい友人など、相続に利害関係のない第三者を選びましょう。
 

遺言執行者

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、①相続財産の管理②遺言執行の妨害の廃除③その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務のある人です。遺言執行者になる人に資格等は必要なく、相続人や第三者など誰でも選任できます。相続発生時まで遺言書を確実に保管し、遺言書通りに遺産分割を進められる人を選びましょう。

確実に遺言内容を執行してもらうために、弁護士などの法律の専門家に依頼するのも選択肢の一つです。弁護士には守秘義務があるので、遺言内容が外部に知られることはありません。また、相続に詳しい弁護士なら、遺言書作成から保管まで一連の手続きでサポートを受けられるメリットもあるので、ぜひ検討してみてください。
 

③銀行の貸金庫

銀行の貸金庫を借りることができれば、自宅で保管するよりも火事などの災害を避けることができます。

なかでも、信託銀行などが提供しているサービスで遺言書の作成から保管までを任せられるものがあります。法的に有効な遺言書の作成ができるだけでなく、信頼できる金融機関に遺言書を保管してもらえる点では安心して預けられます。

しかし、遺言信託にはかなりのコストが発生します。例えば、大手金融機関の遺言信託の場合、当初手数料だけで20万円以上、年間保管料6,600円がかかるので、ここで紹介している遺言の保管先としては最も費用が高額になります。

高額な金融資産がある方や、相続争いが起こらないような遺言書を作成したい方は利用してもいいかもしれませんが、コストをかけるだけの価値があるかどうか考えなければなりません。
 

⑥法務局

2020年7月より、「自筆証書遺言の保管制度」が創設されました。これは遺言者が作成した遺言書を法務局に保管を依頼できるものです。手数料3,900円がかかりますが、生前に見つかって開封されたり、紛失したりする心配がありません。

本制度では、遺言者本人が事前予約のうえ、法務局に赴き、保管の申請をします。そして遺言書保管官によって日付や自署の有無等、遺言の方式を満たしているか確認してもらい、保管証を受け取って手続きは終了となります。

なお、あくまで遺言の要件を満たしているかどうかの確認にとどまります。遺言内容に不備があるかどうかは関与しない点に注意が必要です。不備のない遺言書を作成したい場合には、弁護士に相談して、できれば公正証書遺言の作成を検討すると良いでしょう。

遺言書の保存を誰に依頼するべきかについてご紹介しました。相続が開始するまでは発見・開封さることなく、遺言通りに遺産分割を進めてもらうのは容易ではないかもしれません。遺言の保管先で迷っている方は、相続に詳しい弁護士にご相談ください。適切な保管方法や預け先について提案させていただきます。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。