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代襲相続について図解で説明

代襲相続は相続人となる人が相続開始以前に死亡したり、相続欠格や相続廃除といった事由により相続権を失ったりした場合に、その子や孫などが相続する制度です。例として親を亡くした子が祖父母の遺産を相続することなどがあります。ここでは、代襲相続の事例と、代襲相続が発生した場合の注意点について図解を用いて詳しく解説します。
 

代襲相続とは


 
例えば、図でAが死亡した場合、相続人は配偶者であるBと子Cになるところですが、Aより先に子Cが死亡していた場合、Cが被代襲者となり、Cの子でAの孫であるE、FがAの遺産を代襲相続します(民法887条)。

代襲相続人であるEとF遺産分割の割合は、親であるCの法定相続分を承継するかたちになります。すなわち、Aの配偶者であるBは2分の1を相続し、すでに死亡しているCの遺産(2分の1)をEとFで分割するのでそれぞれ4分の1ずつ代襲相続することになります。かりにAに5000万円の遺産があった場合、法定相続分は下記の通りになります。
 

相続人 法定相続分 金額
妻B 2分の1 2,500万円
孫E 4分の1 1,250万円
孫F 4分の1 1,250万円

 

まだある代襲相続の発生原因

このように、祖父母の遺産を先に亡くなった親に代わって孫が相続すること以外に、代襲相続がおこるケースがあります。代襲相続がおこる原因を法律上「代襲原因」といいます。

ひとつは相続欠格です。相続欠格は被相続人から見て特定の相続に遺産を相続させたくない場合に相続の資格を喪失させるもので、次のいずれかに該当する相続人が相続資格を失うこととなります(民法891条)。

  • ①被相続人または優先相続人を殺害又は殺害しようとして刑に処せられた者
  • ②被相続人が殺害されたのを知って告発・告訴しなかった者
  • ③詐欺・強迫により遺言を妨げた、撤回・変更・取消を妨げた者
  • ④詐欺・強迫により遺言をさせた、撤回・変更・取消させた者
  • ⑤遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者

また、相続廃除も代襲原因となります。相続廃除は著しい不正を行うなどして、被相続人や他の相続人の希望により相続人としての資格をはく奪する場合に、裁判所の手続きを経て相続廃除になります。具体的には、被相続人に対するして①虐待行為②重大な侮辱行為③その他著しい非行があったこととされています(民法892条)。

相続欠格を決めるにあたって必要な手続きはありませんが、相続人を廃除する場合は、家庭裁判所に申し立てるか(民法892条)、遺言書に相続廃除の旨を記載する方法があります(民法893条)。家庭裁判所に申し立てる場合は、審判の確定により廃除が決まります。

相続欠格や相続廃除となった人に子がいた場合、その子が代襲相続人となります。
 

代襲相続で押さえておきたい注意点

 

①代襲相続は直系や傍系のみ

上記の例で言えば、孫E、Fは祖父Aの遺産を代襲相続できますが、被代襲者Cの配偶者Dには代襲資格がありません。あくまで、直系(子や孫)と傍系(兄弟姉妹)に限定されています。
 

②相続放棄は代襲原因にならない

先述した相続欠格や相続廃除の場合はその子が代襲相続できますが、相続放棄した場合には代襲相続できません。上記の例で、Cが生存していてAの遺産について相続放棄した場合、EとFの代襲相続は認められず、BがAの遺産を全て取得することになります。
 

③再代襲相続

代襲者に直系卑属がいる場合、代襲者に代襲原因が生じると、さらに再代襲相続ということになります(民法887条3項)。

 
Gから見て祖父C、父Eがすでに死亡した後、曾祖父Aが死亡した場合、代襲者である父Eが死亡しているので、ひ孫Gが再代襲相続により、曾祖父の遺産を相続できます。この事例では配偶者Bとひ孫Gが相続人となります。
 

④甥姪の子は代襲相続しない

被相続人に子がおらず、両親や兄弟姉妹も死亡していて甥姪がいる場合は、その甥姪が代襲相続できます。先述した直系の場合は再代襲相続ができると説明しましたが、甥姪への代襲相続は一代限りであり、甥姪の子が代襲相続することはできません(民法889条2項)。
 

⑤代襲相続できる養子とできない養子がいる

養子縁組は法律上の親子関係を作出する制度ですが、養子縁組をしたタイミングによって代襲相続できるケースとできないケースがあります。
 

 
ABがCと養子縁組したときにはEがすでに出生していて、養子縁組後にFが出生した場合で考えます。養子であるCが先に死亡し、その後養親Aが死亡した場合、代襲相続できるのは養子縁組後に出生したFのみとなり、養子縁組前に出生したEは代襲相続できません。これは、AとEとの間に法定血族関係がないという考え方から、養親の直系卑属ではないとされています。
 

代襲相続でトラブルを防ぐには生前の対策が必要

代襲相続について図解でご紹介しました。親を亡くした孫などが遺産を相続できる点で、被相続人にとってメリットの大きい制度と言えます。ただ、代襲相続によって甥姪など疎遠だった親戚が相続人になって紛争が大きく広がるケースも考えられます。

代襲相続が発生する場合は特に、相続人同士の紛争を避けるためにも遺言書を作成して遺産分けの方法について対策を講じておく必要があります。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。