相続コラム
遺産分割協議書はなぜ作成が必要?
相続が発生したときに、相続人同士で遺産分割協議を行い、話し合った内容を遺産分割協議書に書き残しておく必要があります。ただ、「うちはまとまった金額の遺産がない」「相続人同士が仲良く、揉め事も起きていない」などの理由で遺産分割協議書の作成は必要ないと感じる人は少なくありません。
確かに、遺産分割協議書は法律上の作成義務はなく、絶対に作成なければいけないものではありません。それでも遺産分割協議書の作成を勧めるのには理由があります。
①遺産相続の手続きで必要になるため
相続手続きをするときに、遺産分割協議書が必要となる場面が数多くあります。
(1)金融機関の解約・名義変更手続等
被相続人が生前保有していた預貯金口座の解約や名義変更等の手続で必要となります。それらの手続のために、戸籍謄本や遺産分割協議書等の必要書類の提出が求められます。
株式や投資信託、有価証券などの場合も同様です。
(2)不動産、自動車の名義変更
金額が大きい不動産の相続は、さまざまな手続きの中でも大変重要です。被相続人が不動産を保有していた場合、名義変更(所有権移転登記の申請)の際に遺産分割協議書が必要となります。たとえ売却する場合であっても、一度は相続人(相続人全員や相続人のうちの誰か)の名義に変更(所有権移転登記)することが必要です。
不動産の名義変更(所有権移転登記)は管轄する法務局で手続きをします。ただ、用意するべき書類がとても多く、書き方もやや複雑ですので、まったく経験のない人にとっては相当の労力と時間を要します。そのため、不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続きは弁護士をはじめとした専門家に任せることが多いようです。
なお、被相続人が自動車を保有していた場合、売却したり廃車する場合でもいったんは相続人への名義変更が必要となりますので、遺産分割協議書が必要となります。
②遺産分割協議書がなければ相続税の特例を受けられないため
高い税率が課される相続税では、節税対策が欠かせません。そこで「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」といった特例を利用する場合、遺産分割協議書を税務署に提出する必要があります。
こうした特例を利用することで相続税が軽減されますので、利用条件に該当する場合は積極的に活用するべきです。また、相続税がかからなくても特例を利用する場合は遺産分割協議書の提出が求められますので忘れずに作成しましょう。
③書面に残して万が一のトラブルに備えるため
遺産分割の内容を相続人同士であやふやにしたり口約束のままにしたりすると、トラブルのもととなります。「そんな遺産分割協議をしたつもりはない」などと言われないよう、必ず書面に残して、後々のトラブルを避けるべきでしょう。
遺産分割協議書は、過去に行った遺産分割の証拠書類となります。ほかの相続人が遺産分割の内容を反故にしようとしても、遺産分割協議書によってこれを防ぐことができます。口約束しかしていなかった場合には、口約束の内容が反故にされる可能性は極めて高いので、そのリスクは看過できないものといえます。
相続人同士で今は仲が良くても、金額の大きな遺産をめぐって後日トラブルになることは少なくありません。些細なきっかけで不仲になったり、過去の遺産分割をめぐって数年後・数十年後に揉めたりする可能性もあるので、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書が不要なケース
遺産分割協議書の作成が不要となるケースとして、次のようなケースが考えられます。
・相続人が1人だけ
相続人が1人だけの場合、ほかの相続人とトラブルになる心配がないので遺産分割協議書は不要となります。戸籍謄本など相続人が一人であることを証明できる書類を用意しましょう。
・遺言書に従って遺産を取得する。
相続人全員の合意のもと、遺言書に書かれているとおりに遺産を取得する場合には、口座の解約や名義変更などの手続きに遺言書を使用すればよく、遺産分割協議書は必ずしも必要ありません。
遺産分割協議書に記載すべきこと
遺産分割協議書は法律上の作成義務がないため、書式は自由です。ただ、押さえておきたいポイントとして次の項目があります。
- ・誰がどの遺産を取得するのかを記載する
- ・相続人全員の署名・実印がなされている
- ・相続人全員の印鑑証明書が添付されている
- ・遺産分割協議を行った日付が記載されている
遺産分割協議書を作成すること自体にデメリットはありません。災害時の備えがあるように、遺産分割においても相続人同士のトラブル備えることは大切です。相続手続きをスムーズに進めるため、尚且つ相続人同士が不仲になるのを防ぐためにも遺産分割協議書の作成をおすすめします。