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配偶者の住居贈与は遺産分割の対象か

住み慣れたマイホームで最後まで過ごしたい。そう願っている方は少なくないのではないでしょうか。こうした願いを叶えるためにも一度考えておかなければならないのが、夫婦の一方が亡くなった際にマイホームをどうするのかということです。高額の評価となることも多い不動産は、相続時の扱いをめぐって相続人の間で問題になりがちです。マイホームの所有者となっている人が亡くなった場合、配偶者にマイホームをそのままの形で相続させることが難しくなってしまう可能性もあります。
 

マイホームも遺産分割の対象に

相続が発生した場合、原則として被相続人の財産は相続人全員で分け合うことになります。マイホームもその例外ではありません。
マイホームのような不動産も被相続人名義のものは、当然遺産分割の対象になります。
ここで問題になるのが、マイホームを含む遺産を相続人間でどのように分配するか、ということです。マイホームのような不動産は価値が高い財産ですが、なかにはマイホーム以外の財産(預貯金など)がほとんどない、という方もいると思います。こうしたケースにおいて、マイホームを売却してお金を作らなければならなくなる、マイホームをもらった人がほとんど預貯金を相続できなくなる、といった結果になりがちです。
そうなると、残された配偶者が、住み慣れた家を手放さざるを得なくなるなどしてその生活の基盤が失われ、大きな不利益を受けてしまう可能性もあります。
 

配偶者へのマイホームの生前贈与は相続時に優遇される

こうした不都合を回避する方法の1つが、配偶者にあらかじめマイホームを生前贈与しておくことです。
もっとも「生前贈与をする」となると別途特別受益の問題が出てきます。簡単にいうと、生前贈与を受け取った場合、相続発生後に「贈与を受け取った人については、贈与を受け取った分を遺産分割によって取得する財産から減らしてほしい」と他の相続人からいわれてしまう可能性があるということです。
こうした生前贈与の分を考慮して相続分を調整する作業を「持戻し」といいます。
もっとも特別受益にあたる生前贈与があったとしても、必ず「持戻し」をしなければならないというわけではありません。被相続人が「持戻しはしなくていい」という意思を表明した場合には、被相続人の意思が尊重されて持戻しはしなくてもよいことになります。これを「持戻しの免除」といいます。
そして、配偶者がマイホームの贈与を受ける場合については、一定の条件をみたすときには、持戻しを免除する意思が推定されます。つまり、特に遺言書などに「持戻しを免除する」と記載しなくても、特に反対の意思を表明しない限りは、持戻しが免除されるということです。
 

持戻し免除の意思表示が推定されるための要件

夫婦間における持戻し免除の意思表示については、民法903条4項に規定があります。
以下、この条文が適用される条件について見ていくことにしましょう。
 

婚姻期間が20年以上の夫婦であること

婚姻期間が20年以上あることが必要です。事実婚は含まれないことに注意しましょう。
 

居住用の不動産を贈与・遺贈したこと

居住用の不動産を贈与・遺贈したことが必要です。マイホームの贈与であれば、この条件については問題なくクリアできます。
 

相続や遺言で困ったことがあったら

婚姻年数が短い、事実婚であるなどの場合は民法903条4項が適用されません。夫婦であれば遺言書を作成して持戻し免除の意思を表示するなど、各家庭の事情に応じた対策を考える必要があります。
マイホームの相続について何か気になること、困ったことがありましたら、お気軽にご相談いただけましたら幸いです。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。