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遺産分割前の預貯金払戻し制度について

相続法の改正により、これまでなかった新しい制度が次々とスタートしています。その1つが、預貯金の払い戻し制度です。この制度が始まったことで、遺族が遺産分割をする前の段階で故人名義の預貯金の一部を引き出せるようになりました。このコラムでは制度の概要や実際の手続き等について解説します。
 

以前の制度について

人が亡くなると、その財産は相続の対象となり、遺産分割が終わるまでは自由に動かせなくなります。
故人名義の預貯金もその例外ではありません。
「故人の預貯金口座は凍結される」という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
相続法が改正されるまでは、他の相続財産と同じように故人名義の預貯金を相続人が勝手に引き出したりしてはいけない、ということになっていました。つまり遺産分割が終わるまでは、相続人といえども故人の預貯金には一切手をつけてはいけないルールになっていたのです。
しかし、人が亡くなった後というのは何かと出費が多いものです。葬儀費用や当面の生活費などでまとまったお金が必要になることもあります。
このような場合において、遺族に十分な預貯金がなかった場合はどうでしょう。葬儀費用が足りない、さらに明日の生活にも困る、という事態にもなりかねません。
このような不都合を解消するために今回の相続法改正で新設されたのが、預貯金の仮払い制度です。
この制度により、遺族が故人名義の預貯金の一部を引き出せるようになりました。
 

いくらまで引き出せる?

それでは、1つの金融機関につき、いくらまで引き出せるのでしょうか。引き出せる金額の上限については、民法できちんとルールが決まっています。具体的には、次のとおりです。
 

  • ・相続発生時における預貯金の残高×1/3×各相続人の法定相続割合
  • ・150万円

 
上記のうち、どちらか低い方の金額が上限となります。
なお、このとき引き出した現金は、相続財産と前渡しとして扱われます。引き出した分の現金は遺産分割のときに各自の相続分から差し引かれますし、相続財産を受け取ってしまった以上は単純承認したとみなされ、相続の放棄や限定承認もできなくなります。
故人に借金がある可能性が否定できない場合は注意が必要といえるでしょう。
 

預貯金の仮払いを受けるために必要な書類

仮払いの手続きは、故人名義の口座がある金融機関で行うことになります。
そのときの手続きに必要なものは各金融機関によって異なりますが、一般的には申請書のほかに次のような書類が必要になります。
 

  • ・被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本または法定相続情報一覧図
  • ・被相続人の身分証明書・印鑑証明書

 
詳細は、各金融機関にご確認ください。
 

仮払い制度を利用しても必要なお金が足りないときは?

故人の預貯金残高によっては、仮払い制度を利用してお金を引き出したとしても、とうてい葬儀費用などに足りない、ということもあると思います。
このような緊急事態があったときは、家庭裁判所で仮処分手続きを行うことで本当に必要な金額を引き出せます。
ただ、裁判所の手続きが必要となると、一般の方にはハードルが高いかもしれません。そうした場合には遠慮なく弁護士にご相談いただければと思います。
 

相続で不安なことがあったら

預貯金の仮払い制度は遺族にとっては便利なものですが、同時に相続トラブルの火種になる可能性をも秘めている制度といえます。
「勝手に遺産を使った」などとして、遺産分割時にもめる可能性もあるからです。
こうしたトラブルを避けるためには、まずトラブルが起きる前に適切なアドバイスを受けることが重要といえます。もし相続に関して何か不安なことがありましたら、一度お話しいただけますと幸いです。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。