相続コラム
GDPRについて
インターネットの普及・発展に伴い、従来では考えられなかったタイプの資産――ネット証券口座や暗号通貨といったデジタル上の資産が登場しています。
これらが相続財産中に含まれる場合、どのように相続の準備や手続きを進めたらよいのでしょうか。
GDPRなどの法律による個人情報保護の現状なども踏まえつつ紹介します。
デジタル遺産とは
デジタル上の資産が遺産として残されたものを、デジタル遺産といいます。
簡単にいうと、オンライン上で管理されている財産のことです。
ネット銀行の口座や電子マネーの残高などを思い浮かべてもらえるとよいかもしれません。
そして、こうしたデジタル遺産の問題を考える上で欠かせないのが、GDPRをはじめとした個人情報保護関連の法律の知識です。
デジタル遺産の中には個人情報と密接に関連するものもあるため、個人情報保護法制が実務に影響を与える可能性があるのです。
GDPRとデジタル遺産
GDPR(一般データ保護規則:General Data Protection Regulation)は、EUが2018年に施行した個人情報保護を目的とした法律です。
GDPRは個人に関する情報は個人のものである、という考えのもと、個人情報の売却や無断利用を厳しく規制しています。
規制の対象となる個人情報としては、氏名やメールアドレス、クレジットカード番号などがあり、EUを含む欧州経済領域内で取得したこれらの情報を域外に持ち出すことは禁止されました(海外駐在員や留学生、現地在住者などは日本人であっても注意が必要です)。
日本ではまだEU並に個人情報の利用に関する規制が強化されているわけではありませんが、それでも個人情報保護法の改正案が成立するなど今後は個人情報の扱いに変化が生じることが予想されます。
相続との関係でも、こうした動きが影響を与える可能性があるといえるでしょう。
デジタル遺産の問題に対して適切に対処するためにも、法令のチェックを怠らないようにする必要があります。
デジタル遺産に含まれるもの
デジタル遺産に含まれる財産としては、次のようなものが挙げられます。
- ・ネット銀行やネット証券に口座のある資産(現金、株式、FX、投資信託など)
- ・電子マネー・QRコード決済アプリの残高
- ・仮想通貨
その他、SNS・携帯会社のアカウント情報や有料サービスのアカウント情報(ソシャゲ、サブスク型サービス)、デジタル上に存在する創作作品やドメイン、商標などもデジタル遺産の一種といえます。
デジタル遺産をめぐるルールについては海外が先行しており、日本では特に法律があるわけではありません。
ただ、GDPRをはじめとした個人情報の取り扱いに関するルール作りが年々進んでいることから、日本でも今後制度の整備が進む可能性はあります。
現時点におけるデジタル遺産の問題点
オンライン上に存在しているデジタル遺産はスマートフォンやPCで簡単に管理できる一方、不動産などとは違って目に見えません。
資産内容の把握がしにくいことから、相続でも問題になりやすいといえます。
たとえばサブスク型のサービスなどは毎月の引き落としが発生するため、そのままにしておくと支払いだけが発生してしまう可能性があります。
さらにクレジットカードの支払いなど負債のたぐいにも注意が必要です。
また仮想通貨などのプラスの資産については相続税の課税対象になるため、うっかり見逃してしまうと延滞税や重加算税を課される可能性があります。
デジタル遺産の相続で事前にできること
遺産相続の手続きや相続税の納付を適切に行うためには、遺産の内容をきちんと把握できるようにしておくことが大切です。
相続財産の調査をスムーズに進められるようにするためにも、生前から対策を始めておくことが望ましいといえます。
必要な情報を紙に書いてもらう
まず考えられる対策の1つとして、紙に必要な情報をまとめてもらうことが考えられます。
遺言書やエンディングノートに財産の内容やアカウント情報(ID・パスワード)など必要な情報を残しておいてもらうと、財産内容の確認をはじめとする手続きが比較的進めやすくなるからです。
なお、デジタル遺産の管理に使っているスマホやパソコンのパスワードがないとデバイスにログインできなくなり、アカウントの管理などに必要な作業そのものができなくなります。
利用中のサービスに関する情報だけでなく、スマホやパソコンのパスワードなども必ずわかるようにしておきましょう。
普段から家族間で話し合っておく
普段から家族でデジタル遺産の内容、あるいは自分の死後にしてほしい作業について話し合っておくことも大切です。
どこに何があるのか大体の検討がつけられるだけでも、財産の確認漏れが起きにくくなります。
各サービスの規約について確認しておく
各サービスの規約についても確認しておきましょう。
サービスによって加入者やアカウントの名義人が亡くなったときの対応が異なります。
たとえばLINEはアカウントの持ち主が亡くなった後、遺族がそのアカウントを引き継ぐことはできません。
一方、サービスによっては遺族が管理を引き継げる場合もあります。
適切に対処するためにも、相続が起きたら早めに運営者に連絡しましょう。
相続をめぐる相談は弁護士に
デジタル遺産の問題をはじめ、現代の相続ではこれまで考えられなかったような問題も生じてきています。
このような状況で相続をスムーズに進めるためには、生前の対策が不可欠です。
もし相続について不安なこと、お困り事がありましたら、どうか気軽にご相談に来ていただけたらと思います。