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生前贈与をする場合に贈与契約書は作るべきか

相続対策などの観点から生前贈与をすることを考えている方もいるかもしれません。
特定の誰かにあらかじめ財産をあげておく生前贈与は、うまく行えば節税にも役立ちます。
ただ、このとき意外と盲点になりがちなのが契約の方式です。
贈与契約そのものは口約束だけでも成立しますが、口約束では後に贈与があったことを証明できません。
後のトラブルを防ぐためにも、できればきちんと契約書を作っておくのがベターです。
 

贈与契約書を作るメリット

贈与は契約の一種(贈与契約書)であり、「財産をあげる」「もらう」といった当事者間の口約束だけでも有効に成立します。
ただ、口約束だけで贈与契約を済ませてしまうことには不安があるのも事実です。
後で簡単に契約を解除されるリスクがありますし、後で贈与があった事実も証明できなくなる可能性があるからです。
贈与契約書で契約の内容を書面にしておくことは、こうした贈与に関する不安の軽減に役立ちます。
すでに行われた贈与に関しては仕方ありませんが、これから行う予定の贈与については契約書を作るようにしておくのがおすすめです。
 

贈与契約書を作らないことによるリスクとは

「いちいち契約書を作るなんて」と面倒に思う方もいるかもしれませんが、贈与に際して契約書を作らないことには契約書作成の手間を超えるリスクが存在します。
具体的には次のようなリスクが考えられます。
 

約束通り贈与を受けられない可能性がある

書面によらない贈与の場合、まだ履行されていない部分については各当事者が解除できます。
つまり、単なる口約束では約束通り財産をもらえる保証がないということです。
一方、契約書を作って贈与を行った場合は原則として契約の解除はできません。
契約書を作っておくことは相手が約束を反故にすることを防止する効果が期待できるのです。
 

贈与があった事実を証明できない

口約束では契約の証拠が残りません。
それが後になってトラブルを引き起こす可能性もあります。
たとえば生前贈与はもともと遺産分割時に問題になりやすく、贈与の事実が証明できないと相続争いに発展するおそれが出てきます。
この点、契約書で贈与があったことをオープンにしておけば、そのぶんを考慮して遺産分割ができるので相続争いの防止に効果的です。
さらに贈与契約書の存在は、相続税に関するトラブルの防止にも役立ちます。
契約書がないと税務調査に入られたときに贈与があったことを証明できず、名義預金などを疑われて課税されるおそれがあります。
 

贈与契約書の作り方

贈与契約書は贈与のたびに作るべきです。
特に、公正証書は信頼性が高く、偽造などを疑われるリスクが低くなります。
贈与する財産の内容によっては公正証書の形で契約書を作っておくとよいでしょう。
また、実際に契約書を作る際には、次のような作業が必要になります。
 

必要な内容を記入する

後になって契約書の内容をめぐって争いを起こさないためにも、必要な内容を漏れなく記載していく必要があります。
 

贈与を行った日付

贈与を行った日付は忘れずに記載しましょう。
契約書の日付がないと後になってトラブルが起きやすいです。
 

契約の当事者

誰が誰に贈与したのかがわかるようにしておきましょう。
 

贈与した財産の内容

贈与した財産の内容についても詳しく記載しましょう。
不動産の場合は所在・地番・地目といった登記簿に書かれている情報まできちんと記載します。
 

収入印紙の貼付

不動産の贈与では収入印紙が必要になるので、注意が必要です。
 

当事者の署名・押印

当事者双方の署名・押印もあると、本人が自分の意思で作ったものということで契約書としての信頼度が高まります。
 

作成時の注意点

なお、実際に贈与契約書を作成するにあたり、いくつか注意するべき点も存在します。
 

契約書は2通作成する

契約書は2通作成し、当事者双方が保管することになるのが一般的です。
 

連年贈与にならないように注意する

贈与税は年間110万円までは非課税です。
とはいえ、毎年繰り返し贈与を行っていると税金逃れを税務署に疑われるリスクがあります。
日付や、財産の内容・金額を変えるなど贈与時には多少工夫が必要になるといえそうです。
 

過去の日付で契約書を作らない

過去の贈与について契約書を作りたいからといって、過去の日付で契約書を作ってはいけません。
このような行為は「文書偽装行為」として大問題になります(税務調査で発覚した場合は重加算税の対象になるおそれもあります)。
過去の贈与について困ったことがある場合は一度専門家に相談してみましょう。
 

贈与の事実を認めてもらうためには客観面も必要になる

贈与の事実を認めてもらうためには、契約書の存在以外のファクターも必要です。
預金通帳と印鑑の管理は贈与を受けた側が行う、不動産や株の名義も書き換えるなど、客観的に見て「贈与があった」といえる状態を作っておかなければなりません。
 

生前贈与では他の問題が起きることも

生前贈与については契約書や相続税以外にも、特別受益、遺留分の侵害など様々なことが問題になり得ます。
よりよい相続を実現するためにも、事前にトラブルの種はできるだけ減らしておくことが重要です。
もし生前贈与に関して不安なことやわからないことがあったら、一度気軽にご相談いただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。