土曜・夜間も相談対応

TEL 050-3628-2026電話受付時間 平日 09:00~20:00
土日祝 09:00~20:00

遺言者より先に推定相続人が死亡した場合

自分の死後の遺産争いを防止するという意味で、遺言を書くことは意味のあることです。
しかし遺言を書いてから何年、何十年と経過してしまうと、周囲の状況が変化し、前に書いた遺言の内容がかえって問題を引き起こすケースもあります。
たとえば、遺言書に名前の挙がった推定相続人が相続開始時点ですでに亡くなっているような場合です。
その場合、遺言の効力はどうなってしまうのでしょうか。
以下、詳しく見ていくことにしましょう。
 

前提~推定相続人とは誰か

民法上、相続人になれる人は被相続人と一定の関係のある親族に限定されています。
そして、「将来相続が起きたときに相続人になるであろう」と思われる人のことを推定相続人といいます。
遺言では、これらの推定相続人に対して、誰にどんな財産を相続させるかを具体的に指示することが可能です(遺言がない場合は「相続財産全体に対して○%」という形で各相続人のもらえる遺産が決まるため、特定の財産を特定の人に遺せるとは限りません)。
 

問題の所在

それでは遺言者(遺言を作成した人)より先に、推定相続人が死亡した場合はどうなるのでしょうか。
相続法には「同時存在の原則」という基本ルールがあり、これによれば相続開始時点で生存していない人は相続人にはなれないことになっています。
そこで、「死亡した推定相続人の関係する部分の遺言は無効になってしまうのでは?」という素朴な疑問が出てくることになるのです。
特に、亡くなった推定相続人に子どもがいた場合、その子どもが代襲相続によって新しく相続人になる可能性もあります。
つまり、遺言が有効になるか無効になるかで、推定相続人の子どもが遺言書に書いてある財産をもらえるかどうかが決まってくるわけです。
 

判例の考え方

判例(最判平成23年2月22日)では、この問題に対して次のような考え方をとっています。
 

原則

相続発生以前に推定相続人が死亡した場合、その推定相続人に関係する部分については、無効になるのが原則です。
つまり、推定相続人の子どもが代襲相続によって、遺言書記載の財産を相続するということにはなりません。
 

例外

ただし、これには例外があります。
それが、被相続人が「推定相続人の子どもやその他の人に財産を相続させたい」と考えていたことを思わせるような、特段の事情がある場合です。
この特段の事情については、遺言書の他の記載や、遺言作成時の状況などを考慮して判断されることになります。
ですから、遺言に「○○をAに相続させる。
Aが死んだ場合は、Aの子Bに相続させる」といったような記載があったような場合では、特に問題なくBがAの代わりに財産を相続する……という結論になります。
 

遺贈の場合はどうなる?

一方遺贈で、特定の人に財産をあげたいと考えている場合はどうでしょうか。
このようなケースでは、遺言者が死亡するより前に受遺者(遺贈を受ける人)が死亡した場合は遺贈の効力は生じない(民法994条)とされています。
したがって、原則として遺贈について書かれた部分については無効になってしまいます。
ただし、「受遺者が亡くなっている場合は、他の人(たとえば受遺者の子ども)に遺贈をする意思」を表明していた場合は話が別です。
たとえ受遺者が相続開始時に亡くなっていたとしても、被相続人の生前の意思を尊重するような形で遺贈が行われます。
 

遺言をめぐってトラブルが起きてしまったら

遺言の内容に何らかの問題が見つかった場合、相続トラブルに発展してしまう可能性があります。
相続人同士はもちろんのこと、受遺者(やその子ども)がいる場合はその人たちをも巻き込んで遺産をめぐる争いが勃発してしまうかもしれません。
こうした事態の予防・早期解決のためには、トラブルが起きそうになった時点で早めに対処することが大切です。
弁護士が介入することで当事者間の話し合いがうまくいくこともありますので、もし不安なことや疑問点があったら、一度お話を聞かせていただければと思います。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。