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遺贈があれば相続分は減少する?

複数の相続人が遺産を相続する場合は、法定相続分にしたがって公平に分割されるのですが、特定の法定相続人に遺贈があった場合は、どのように相続分を計算するのでしょうか?
この記事では、遺贈や相続の意味について確認した上で、遺贈があった際の相続分はどうなるのか?という点について解説していきます。
 

遺贈とは?相続との違いを解説

まず、遺贈と相続の違いを確認しておきましょう。
相続とは、ある人が亡くなったときに、法定相続人である配偶者や子供、親や兄弟姉妹といった人に財産を与えることをいいます。
相続を受ける場合は、預金や不動産といったプラスの財産に加え、借金などのマイナスの財産についても法定相続人の間で話し合いをし、分割して相続することになります。
一方で、遺贈とは、被相続人の意思によって特定の人に財産を与えることをいいます。
被相続人から第三者へ財産を与えるという点は相続と共通していますが、遺贈の場合は法定相続人以外の人に対しても財産を与えることができます(法定相続人に遺贈することも可能)。
遺贈と贈与は似ていますが、贈与は双方の合意の元で財産を与える行為であることに対して、遺贈は財産を受け取る人の意思に関係なく、遺贈をする人が自由に決定できます。
 

遺贈があれば相続分は減少する?

遺贈があれば相続分は減少するのか?という問題についてですが、遺贈の受け取り手によって相続分がどうなるのかが変わってきます。

  • 1.法定相続人以外が遺贈を受けた場合
  • 2.法定相続人が遺贈を受けた場合

1.の場合、遺贈を受けた人に相続権はないため、そもそも相続はしません。したがって、遺贈を受けた人の相続分はありませんが、法定相続人に対しては遺贈された財産が差し引かれた分の財産が相続されます。
2.の場合、遺贈を受けた人の相続分は減少しますが、そうでない法定相続人の相続分は減少しません。
これは、法定相続人間での遺産分割は公平になされるべきであると考えられているためです。
遺贈があった際の相続分を決める制度として、特別受益制度というものがあります。
特別受益とは、贈与や遺贈によって被相続人から利益を受け取ることをいいます。
遺贈による財産を無視して相続分を計算すると不公平な相続になってしまうため、民法903条にしたがって特別受益を考慮した計算をすることになります。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
引用元:民法903条

遺贈を受けた人がいるときは、財産の価格に遺贈の価格を加えたものを相続財産とし、遺贈の価格を差し引いた分が遺贈を受けた相続人の相続分になります。
文字だけではわかりにくいかもしれませんので、計算例を見ていきましょう。
 

法定相続人の1人に遺贈があった場合の相続分の計算例

被相続人のAさん、配偶者のBさん、長男のCさん、長女のDさんがおり、相続財産である預金8,000万円と、Cさんへの不動産の遺贈2,000万円相当があったとします。
 

【遺贈がなかった場合の計算例】

遺贈がなかったとしたら、配偶者Bさんの相続分は2分の1の4,000万円、子供のCさんとDさんの相続分は2分の1をさらに2分の1してそれぞれ2,000万円となります。
しかしCさんは遺贈を受けているので、実質4,000万円分の遺産を受け取ったことになり、不公平です。
 

【遺贈があった場合の計算例】

遺贈がある場合は、預金8,000万円に遺贈された不動産2,000万円を加えた1億円が相続財産になります。
配偶者Bさんの相続分は2分の1の5,000万円、CさんとDさんの相続分は2分の1をさらに2分の1した2,500万円になりますが、Cさんは2,500万円から2,000万円を差し引いた500万円を相続することになります。
また、Cさんの相続分から遺贈分を差し引いた金額がマイナスになった場合、Cさんの相続分は0円となります。
マイナスになった分の金額を支払う必要はありません。
 

まとめ

この記事では、遺贈があった場合の相続分はどうなるのか、ということをご説明してきました。
遺贈は特別受益にあたるため、相続される預金などと遺贈されるものの金額を合計したものを相続財産とし、そこから法定相続人に分割されることになります。
遺贈を受けた人が相続するのは、相続分から遺贈されたものの金額を差し引いたものになります。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。