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無効な遺言も死因贈与としては有効?

万が一に備えて自身の死後、財産をどのように分配するかを残すことを遺言と言いますが、この遺言には厳格なルールがあり、条件のうちどれか一つでも欠けていると無効とされてしまいます。

では無効となってしまった遺言はもう何の効力も持たないのでしょうか?

実は死因贈与という遺言によく似た行為があり、状況によっては無効になってしまった遺言を死因贈与として転換できる可能性があります。

今回は、遺言が無効になってしまうケースや死因贈与の仕組み、無効な遺言が死因贈与として有効となる場合の基準についてご紹介します。

遺言が無効になるケースとは?

遺言を残す時は遺言者がルールに基づいた形式で遺言書を作成しなくてはなりません。
作成方法はいくつかありますが、自筆で比較的手軽に作成できる「自筆証書遺言」では

  • ① 全文を自筆で書く
  • ② 自書した作成日付を書く
  • ③ 署名をする
  • ④ 捺印する

というルールがあり、どれか一つでも欠けていると無効となります。

しかし、4つすべての条件を満たし一見有効と思われる場合でも注意が必要です。
後になって加筆や修正をしたり、内容が不明確だったりすると認められません。

また、相続人が手を添えて書かせたような疑いが生じた場合も無効となる可能性があります。また、遺言書は金融機関や役所での手続きにも使われるので、目録には登記簿謄本と一致した不動産内容や銀行支店名・口座の種類・口座番号まで正確に記さなくてはなりません。

加筆修正が必要になった場合は一旦破棄して新たに作成し直すと確実です。
もしも遺言書が複数存在した場合でも作成日付が新しいものが優先されるため、遺言者の意に反した分配をされるおそれはありません。

死因贈与とは?

「自分が死んだら甥に自宅を譲り渡す」といった約束を双方が合意のもとに交わすことを死因贈与と言います。

口頭で約束をしただけでも契約は成立しますが、後々のトラブルを防ぐためにも書面で残しておくのがいいでしょう。

また、「自分が死ぬまで介護など身の回りの世話を行った場合、末娘に自宅を譲り渡す」といった受け取る側に負担や義務を負わせることも可能です。

この場合、受け取る側が負担や義務を負わされたあとに契約を撤回される恐れがありますが、「受け取る側がきちんと義務を果たすか、ある程度履行していた場合は特段の事情がない限り契約の撤回はできない」との判例があり、受け取る側が一方的な不利益を被るリスクは低いといえます。

他にも、自宅などの不動産を贈与する場合、受取人が確実に取得できる仕組みが用意されています。

死因贈与契約書を公正証書で作成し、その中に不動産の仮登記の申請を承諾する旨、受取人が死因贈与契約を執行する旨を記載しておけば受取人は単独で所有権移転登記の手続きが可能になります。

遺言による遺贈では仮登記は認められておらず、死因贈与ならではの仕組みといえます。

遺言と死因贈与の違い

死因贈与は遺言と似たような行為ですが、大きな違いもあります。

双方の合意が必要

遺言は条件を満たしていれば相続人に内容を告げていなくても有効となるため、「音信不通だった祖父が自分に財産を残してくれていた」というような話が現実に存在します。
しかし、死因贈与の場合は内容について双方が合意していなければ成立しません。

遺言も死因贈与も本人が死亡してはじめて有効となりますが、遺言については内容により相続人が受け取りを拒否することも可能です。

一方、双方が内容について合意していた死因贈与は拒むことができないので注意が必要です。

財産贈与のみに有効

遺言では財産の分配の他に、子の認知や生命保険金の受取人の変更などもできます。
それに対して死因贈与は財産の贈与に関することのみしか契約できず、契約の仕方にも制限があります。

遺言であれば「不動産は甥に、預金は姪に」といった複数人を相手に財産の分配を指示できますが、死因贈与の場合は特定の相手一人に全財産または財産の一部を贈与する、という契約しかできません。

無効な遺言は死因贈与として有効?

厳格なルールのある遺言書の作成ですが、もし不備があり無効となってしまった場合でも死因贈与として有効となる場合があります。

自筆していなかった

相続人が下書きした遺言書に、遺言者がそのまま署名捺印したため無効と判断されたケースがあります。

しかし、相続人に対して“遺言証書”を手渡しており、生前の当事者同士の関係性なども踏まえて死因贈与への転換が認められました。

作成日付や捺印がなかった

自筆で作成されていたものの、作成日付や捺印がなく無効と判断されたケースです。しかし、「妻に全財産を譲り渡す」といった内容であり、妻も譲り受ける認識でいたことから死因贈与が成立していると認められました。

無効な遺言が死因贈与へ転換できるかの基準とは?

無効な遺言でも死因贈与として転換が認められることは少なくありませんが、そこには明確な基準が存在します。

中には友人に代筆してもらい全財産を孫に残すと遺言書を作成しましたが、自筆ではないため無効となった例もあります。

その後、死因贈与として転換可能かが焦点となりましたが、受け取る側である孫がその事実を知らなかったことなどから総合的に判断され、転換が認められなかったケースもあります。

遺言は、自身の財産について相手の同意を求めなくても分配が可能ですが、死因贈与はあくまでも双方の合意のもとの契約であり、受け取る側も内容を把握している必要があります。
確実に財産を譲りたい場合はルールに則った遺言書を作成しておくのがいいでしょう。

自筆での作成が難しい場合は、証人の立会いのもと公証人に口授し公証人によって作成される公証証書遺言がおすすめです。

自宅や病院など公証役場以外でも作成可能で、原本は公証役場にて保管されるため、隠匿や改ざんの恐れもありません。

まとめ

今回は、遺言が無効になってしまうケースや死因贈与の仕組み、無効な遺言が死因贈与として有効となる場合の基準についてご紹介しました。
遺言書の作成には厳格なルールがあり、無効となるケースも少なくありません。

確実に財産を譲り渡したい相手がいる場合は、遺言書の作成に加え死因贈与契約も結んでおくことをおすすめします。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。