相続コラム
二次相続とは
一般的に相続というと、配偶者や子どもに相続・分配されるイメージを持っている方も多いでしょう。これは1度目の相続ということで「一次相続」と呼ばれています。
残された配偶者も亡くなってしまった場合、子どもたちは2度目の相続にあたるので「二次相続」になります。
二次相続は一次相続と同様に、そのまま子どもへ相続されるのかと思いきや、実は一時相続とは違う部分もあるので注意しなくてはなりません。
そこで今回は、二次相続が一時相続とどう違っていて、どのような対策が必要となるのかご紹介していきます。
二次相続の基礎知識
4人家族(父・母・子ども2人)で父親が亡くなってしまった場合、父親が所有していた資産は母親と子ども2人に相続されることになります。
最初の相続となるので一次相続と呼ばれているのですが、二次相続では母親も亡くなった場合に2人の子どもが母親の持つ資産を相続します。
一見、一時相続と二次相続は同じように見えてしまうかもしれませんが、法定相続人の数に違いが出ていることが分かります。
一次相続では母親と子ども2人の計3人が相続人となりましたが、二次相続では子ども2人しか相続人となりません。
法定相続人の数が減ってしまうことで相続税の基礎控除額にも違いが出てきます。
基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で求めることができます。
例えば一次相続の場合、3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円が基礎控除額となります。
つまり、相続した遺産が4,800万円以下であれば相続税がかかることもないのです。
一方、二次相続の場合は3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円となるので、4,200万円以下なら相続税はかかりません。
こうして見比べてみると一次相続と二次相続では600万円もの差額が生まれており、一次相続の方が相続税はかかりにくい状況と言えるのです。
しかも一次相続では「配偶者控除」という特例があり、法定相続分以下もしくは1億6,000万円以下の遺産であれば配偶者は基礎控除額以上でも相続税を支払わずに済みますが、二次相続では配偶者がいないため、基礎控除額に達すると基本的には相続税を納税しなくてはいけなくなります。
そのため二次相続についてもしっかりと対策を立てておかないと、家族に無駄な負担が掛かってしまう可能性があります。
相次相続控除とは?
二次相続には配偶者控除のように特例が全くないのかと言われると、実は「相次相続控除」と呼ばれる仕組みがあります。
相次相続控除とは、一次相続から二次相続までの期間が10年以内の場合、金銭的な負担を減らそうと相続税が減額されるものです。
一次相続で相続放棄した人や相続権を失った人、一次相続の相続税をまだ課税していない人は対象外となってしまいますが、そうでなければ相次相続控除が受けられます。
どれくらい減額されるかというと、一次相続で支払った相続税のうち経過年数1年に対して10%の税額になります。
年数が経てばその分控除される額も減ってしまうので注意しましょう。
二次相続の対策方法
二次相続だと基礎控除額が減ってしまうため、子どもへの税負担が増えてしまうことになります。そうならないためには、一次相続のうちから二次相続も考慮した上で相続税対策を実施すると良いでしょう。
具体的にどのような対策方法があるのか、ご紹介していきます。
孫世代への贈与
基本的に相続は親から子どもへ、子どもから孫へというように移行していき、そのたびに相続税を支払っていかなくてはなりません。
全体を通して相続税の負担を減らすためには、孫に直接生前贈与することも検討してみましょう。
贈与税がかからない110万円を毎年子どもに贈与した場合と孫に贈与した場合で比較してみると、子どもに贈与した場合は相続開始前3年以内の贈与は相続財産に該当すると判断され、330万円分の相続税(税率30%の場合99万円)が課税されることになります。
一方孫へ贈与した場合、孫は相続人に該当しないため贈与された330万円が相続財産に戻されることもありません。贈与税も加算されないため330万円がそのまま孫の手に渡ることになります。
自宅を子どもが相続する
孫がいない場合、自宅の名義を子どもに変えておくのがおすすめです。
自宅を相続する場合は小規模宅地等の特例を使用することもできます。
小規模宅地等の特例は一定の要件を満たせば土地の評価額が80%または50%まで減額されるもので、相続税の負担軽減につながります。
小規模宅地等の特例を受けるためには「親と同居する」という条件があるものの、二世帯住宅でも条件はクリアされるため、あらかじめ二世帯住宅に建て替えて同居しておけばスムーズに小規模宅地等の特例も受けられるでしょう。
一次相続で得た財産で生命保険に加入する
生命保険に加入しておくと、死亡した場合の保険金は500万円×法定相続人の数までなら相続税はかかりません。そのため、配偶者は一次相続で得た財産を使って生命保険に加入しておくと、二次相続時にかかる相続税の負担を減らせます。
二次相続で子ども同士が揉めないために
一次相続では遺産分割についての話し合いは配偶者が主導して合意を取っていくことが多いですが、二次相続では子ども同士の話し合いになります。
子ども同士の話し合いになると、遺産分割について揉めてしまうケースが少なくありません。しかも二次相続になると相続税の負担が大きくなる可能性もあり、最悪の場合家族の縁が切れてしまうかもしれません。
そうならないためにも、できれば一次相続の段階で二次相続の遺産分割についても話し合いをしておいた方が安心です。
いくら仲が良い家族でも遺産問題で離散する恐れもあるので、ぜひ早めに遺産分割に関する話し合いを進めておきましょう。
まとめ
今回は二次相続についてご紹介してきました。二次相続は一次相続とは異なり、相続税の対象になりやすく負担が大きくなる傾向にあります。
しかし、一次相続やそれ以前から対策を進めておけば、子どもにかかる負担を軽減させることも可能です。
また、二次相続での遺産分割の話し合いになるとどうしても揉めやすくなってしまうため、相続や遺産に関する話し合いは家族が元気なうちに行っておくと良いでしょう。