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自筆証書遺言は相続法改正でこう変わりました

1 相続法の改正

平成25年9月4日の最高裁判所大法廷判決により、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の法定相続分の2分の1とする(旧)民法900条4号ただし書きの規定が、憲法に反するという判断がなされました。この判決を受けて、上記条文の該当部分は削除されました。しかし、その規定の削除に関する議論の中で、相続法全体について、改正をする必要があることが分かりました。すなわち、高齢化社会の進展や、家族のあり方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から、相続に関するルールを見直すこととなったのです。

 

2 自筆遺言証書とは

自筆遺言証書とは、遺言者によって遺言書の本文・氏名・日付のすべてを自筆して作成する遺言書です。改正前民法においては、その全文について遺言者の自筆が必要となり、一部でも他人が代筆したり、パソコンで作成したりしていると、遺言書のすべてが無効となっていました。

 

3 民法改正後、自筆証書遺言に関するルールはどう変わる?

全文の自筆を有効要件としていた自筆証書遺言の方式を緩和し、自筆証書遺言に相続財産の全部または一部の目録(これを「財産目録」といいます。)を添付するときは、その目録については自筆でなくてもよいことになりました。自筆ではない財産目録を添付する場合には、その毎葉に署名押印をしなければならないと定められています(改正後の民法968条第2項)。署名押印以外には、方式についてとくに制限はなく、書式も自由です。遺言者本人がパソコンで作成することもできますし、遺言者以外の人が代筆することも可能です。また、遺産の不動産について登記事項証明書を財産目録として添付したり、預貯金について通帳の写しを添付したりすることもできます。

 

4 自筆証書遺言についての改正後のルールはいつから適用される?

自筆証書遺言の方式を緩和する、上記法改正の施行日は、2020年1月13日ですので、すでに新しい方式での自筆証書遺言の作成が可能です。

施行日より前に作成された自筆遺言証書は、改正前民法の有効要件を具備していなければなりませんので、全文について自筆が必要になることに注意が必要です。

 

5 法務局における遺言書の保管制度の新設

旧民法においては、自筆証書遺言の保管に関する定めはなく、自筆証書遺言は自宅で保管されている場合が多くあります。しかし、自宅で遺言書を保管すると、遺言書を紛失したり、相続発生時に相続人に見つけてもらえなかったり、相続人が遺言書を破棄・改ざんするという危険性がありました。

そこで、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」において、自筆証書遺言を法務局で保管することができるようになりました。この自筆証書遺言書を保管する制度は令和2年7月10日(金)から開始されます。

この手続きの流れは次のとおりです。まず遺言者が、法務局に遺言書を持参して保管の申請をし、法務局で本人確認と形式審査をクリアすれば遺言書を保管してもらうことができます。遺言者が亡くなったあと、相続人等の相続関係人が、法務局に遺言書情報証明書の交付や、遺言書の閲覧を請求します。遺言書が保管されていれば、法務局は、請求に応じるとともに、他の相続人等に、遺言書を保管していることを通知します。

法務局における遺言書の保管制度を利用した場合、遺言者の死後に家庭裁判所での検認手続は不要となります。

 

6 まとめ

遺言書の作成・保管は大変重要なことですので、自筆証書遺言の書き方や遺言書の保管制度についてお知りになりたい方は、お気軽に弁護士等の専門家に御相談ください。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。