土曜・夜間も相談対応

TEL 050-3628-2026電話受付時間 平日 09:00~20:00
土日祝 09:00~20:00

預金の払い戻しについて

はじめに

被相続人が亡くなった後、金融機関に死亡届を提出すると、亡くなった被相続人の名義の口座は凍結されて、預貯金を引き出すことができなくなります。

これによって、生前の債務の支払い、葬式代、家の中の物の処分費、被相続人から扶養を受けていた同居者等の当面の生活費など、早急に必要な費用を相続人の誰かが立て替えて支払わなければならなくなります。

こういった話をよく聞きませんか?

金融機関が預貯金の引き出しに応じてくれればよいのですが、原則として、相続人全員の印鑑(実印)を押した書面を提出しなければ金融機関は預貯金の引き出しに応じてくれず、手続きに2週間から1か月ほどかかってしまいます。

金融機関によっては、臨機応変に少額に限って法定相続分だけでも預金の引き出しに対応してくれるところもありました。

しかし、平成28年12月19日、以下の内容の最高裁判決が出され、それも難しくなってしまっていました。

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることなく、遺産分割の対象となる。」

つまり、共同相続人による単独での引き出しができず、全員が共同して引き出しを請求するか、遺産分割をしなければならなくなったということです。

共同相続人全員の同意を得ることができない場合には、引き出すことができません。

しかし、これでは、先ほど述べた早急に必要な費用を誰かが立て替えて支払わなければなりません。立て替えて支払うことのできる人がいなければ、相続人としては困ってしまいます。

そこで、被相続人の預貯金を引き出したいという相続人のニーズに応えるため、今回の民法改正において、以下の2つの制度改正がなされました。

①預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関からの引き出しを可能とする。

②預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する。

まず、①について、詳しくみていきましょう。

各相続人が単独で金融機関に払戻を求めることができる金額は、

相続開始時の預貯金債権の額×1/3×払戻を求める相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関から払戻を受けることができる金額の上限は150万円です。

具体的には、相続人が子2人のみの場合で、預貯金が900万円であった場合には、

900万円×1/3×1/2=150万円となります。

次に、②についても、詳しくみていきましょう。

①は、小口の資金需要に対して簡易迅速に対応することができますが、金融機関当たり150万円を超える大口の資金需要には対応できません。

そこで、これに対応するために、以下のとおり、遺産分割前の預貯金の仮分割仮処分制度の要件が緩やかなものとなりました。

ア 遺産分割の調停又は審判の申立があること(本案係属要件)

イ 相続債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により預貯金債権を行使する必要があること(必要性の要件)

 

  具体的には、

 

 a 相続財産に属する債務の弁済

 b 相続人の生活費の支弁をする必要があるとき

 c 被相続人の葬式費用の弁済

 d 相続税の納付

 e 相続財産に係る共益費用の支払い

 f 遺言のより各相続人が負う遺贈義務の履行に必要な費用の支払い

 g 第三者の債務を担保するために相続財産に抵当権など担保設定がされている場合に、その被担保債権に係る債務の弁済をする必要があるとき

です。

②の預貯金債権の仮分割の仮処分については、遺産分割の調停又は審判の申立を前提としており、要件が緩和されたといえ、預貯金債権の仮分割をする必要性(上記a~g)が認められなければなりません。

そして、①と異なり、家庭裁判所での手続となるため、やはり裁判官による要件の認定方法を熟知している弁護士に任せるのが得策です。固定資産税等の税金を滞納すると延滞税が課せられ、銀行からの借入金を返済しないと不動産の競売を申し立てられるといった不利益がありますので、仮分割仮処分によって上記a~gに列挙した支払を期限内に済ませることができ、過大な不利益を避けることができますので、仮分割仮処分については被相続人の死後できるだけ早急に弁護士に相談されることをお勧めします。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。