相続コラム
子どもが小さいまま配偶者が亡くなった
子供が未成年でまだ幼い状態で配偶者である夫(妻)がなくなった場合、未成年の子供は法律行為を行う能力がないと判断されるため、遺産分割協議に参加することができません。そのため、法定代理人である「親」が代わりに遺産分割協議を行うこととなります。
ご両親のどちらかが存命なら、残された親子で遺産分割を行うのみで、大きな争いは起こらず、多くの場合は配偶者が遺産の全てを引き継ぐことになるでしょう。しかし民法上、遺産分割協議において、利益相反と言う点では存命の親も相続人のため、実は代理人にはなれません。
本記事では、配偶者がなくなった場合と、両親が両方死亡してしまった場合に分けて解説します。
■配偶者と未成年の子供がいた場合の相続|親は代理人になれない
遺産分割において、法定相続人は妻(夫)と子です。配偶者が全ての遺産を相続すると思いがちですが、正確にはその配偶者自身も相続人になっているため、「利益相反」という観点から、代理が認められていません。
たとえば、未成年者の父が亡くなり、法定相続人が未成年者と母だった場合、この相続に関して母は未成年者の代理人として手続きを行うことができないと言うことです。法定相続分は、配偶者の割合が2分の1、子どもの割合が2分の1です。
表:法定相続人の順位
法定相続人 | 順位 |
被相続人の配偶者 | 常に相続人 |
被相続人の子
子が既に死亡している場合は孫 |
第1順位 |
被相続人の父母
父母が既に死亡している場合は祖父祖母 |
第2順位 |
被相続人の兄弟
兄弟が既に死亡している場合は兄弟の子 |
第3順位 |
配偶者の法定相続人の状況別の法定相続分は以下の通りです。
相続人の状況 | 配偶者の法定相続分 |
配偶者のみの場合 | 財産の全て |
配偶者と第1順位の法定相続人がいる場合 | 財産の1/2 |
配偶者と第2順位の法定相続人がいる場合 | 財産の2/3 |
配偶者と第3順位の法定相続人がいる場合 | 財産の3/4 |
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
引用元:民法第900条
◆特別代理人の選任が必要
ではだれが特別代理人になるのかですが、相続に関係がない第三者であれば誰でもなることが可能です。しかし、今回の相続には関係がない方でも、次の相続時にトラブルになる可能性もゼロではないので、将来の問題を未然に防ぐ意味でも、特別代理人には弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
◆選任には費用がかかる
特別代理人の専任には家庭裁判所の手続きが必要になりますので、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをします。
その際の費用は『収入印紙800円』、裁判所が書類送付の際に使用する郵便切手代のほかに、特別代理人の報酬(数万円~)を裁判所に納めなければなりません。
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選任に必要な書類
特別代理人選任申立書
未成年者の戸籍謄本
特別代理人候補者の住民票
遺産分割協議案
相続財産がわかる資料 など