相続コラム
被相続人が債務を残して亡くなった
亡くなった家族に借金・債務があることが判明した場合、どうしたらよいでしょうか。
亡くなった被相続人が抱えている借金・債務は死亡によって消滅することはなく、相続の対象になります。相続「財産」というと前向きなイメージがあるため、借金・債務などは負の財産、マイナスの財産などと呼ばれることがあります。
相続の開始にあたってまず把握すべきことは、その借金・債務に連帯保証人は居るか、ということです。連帯保証人は借金をした本人と同等の返済義務を負うため、その本人が亡くなった場合には、お金を貸した人は連帯保証人に借金の返済を請求することができます。
連帯保証人の多くは親族がなっている場合が多いものの、親族以外の人物がなっている場合もあり、連帯保証人が居るのか居ないのか、居る場合は誰なのかを契約書等を見てはっきりさせておく必要があります。
次に、借金・債務の金額の把握です。当記事で解説しますが、相続には次の3つのパターンがあります。
① 単純承認
② 限定承認
③ 相続放棄
この3つのうちどれを選択するかの判断に借金・債務の金額がとても重要です。また、借金は親族にも隠していることがあり、正確な金額の把握に時間がかかる可能性あるため、借金がある可能性を感じた場合はすぐに全容を調査すべきでしょう。
■相続パターンと債務を残して亡くなった場合の選択肢3つ
それでは、それぞれの相続パターンと借金・債務の関係を見ていきましょう。
◆単純承認
単純承認は、特に条件などをつけずに相続手続きを行う、相続における最も一般的な手法です。貯金・不動産などのプラスの財産に加え、借金・債務などのマイナスの財産も全て相続してしまうため、プラスの財産の金額がマイナスの財産を上回っている時に選択すべきでしょう。
次の条件のいずれかに当てはまった場合には、自動的に単純承認を選択したとみなされてしまい、次に説明する限定承認または相続放棄を選択することができなくなるため、注意が必要です。
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相続財産の一部または全部を処分してしまう
相続財産を処分してしまうことは、プラスの財産、マイナスの財産に関係なく、その相続財産が自分のものであると認めることとなり、自動的に単純承認を選択したとみなされます。
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相続の開始を知った時から3ヶ月経過してしまう
相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に限定承認または相続放棄の申請を行わなかった場合、自動的に単純承認を選択したとみなされます。これは逆に考えると、相続開始があったことを知った日から3ヶ月の間、どの相続手法を選択する猶予期間があるということですので、3ヶ月の間にきちんと情報を集めて適切な決断をしましょう。
なお、この3か月の期間は、家庭裁判所の決定でもって期間を延長することが可能です。
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相続財産の一部または全部を隠す、消費してしまう
このような悪意ある行動を取った場合も、自動的に単純承認を選択したとみなされます。
◆限定承認
限定承認は、プラスの財産の金額を上限として、プラスの財産とマイナスの財産を相続するというものです。プラスの資産が100万円、マイナスの資産が200万円だった場合、プラスの資産100万円とマイナスの資産のうち100万円分を相続することとなります。
この場合、価値の比較では損をしておらず、且つどうしても相続したいもの(思い出の品や住んでいる家など)を相続することができるため、そのようなものがある場合には有効な手段となります。
◆相続放棄
相続放棄はその名の通り、相続を放棄して相続手続きに参加しないことを言います。この場合はプラスの財産、マイナスの財産の一切を相続しませんので、相続開始前と変わらない状況が続くこととなります。
■まとめ
亡くなった方に借金・債務がある場合にはその金額に応じて相続のパターンを選択する必要があります。また限定承認・相続放棄をする場合には3ヶ月という期限(期間を延長することも可能)もありますので、事前に知識と情報を得ておいて、いざという時に適切な判断ができるように備えておきましょう。