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調停の相手が海外にいる

被相続人の死亡を確認し、相続人間で遺産相続協議を開始する際、相続人の間で合意がなされない場合は、遺産分割調停を行うことになりますが、調停の際に、相続人のひとり、または数名が海外にいる場合は、どこで調停を行うのでしょうか。

 

本気記事では遺産分割調停の相手が海外にいる場合の対処方法を解説します。

 

 

■遺産分割調停の相手が日本国籍の場合

遺産分割調停をする際、基本的には「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」に調停の申し立てを行いますが、相手が海外在住でも日本国籍の場合は、日本国内の家庭裁判所で調停申立てることができます。

 

この時確認すべきは相手の『住民票』です。

調停相手の住民票が日本国内にある場合なら、その住所地を管轄する家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てができるのですが、もし住民票が日本にない場合、最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。

 

しかし、場合によっては申立人や相手方にとってもメリットのない場所に申し立てることになるケースも考えられますので、(遠方でいくだけで大変など)申立人が住んでいる地域の最寄りの家庭裁判所に申し立てをすることもできます。

 

この場合、家庭裁判所が、どこの裁判所で手続を進めるのが良いかを判断してくれます。

 

また、申立人が住んでいる地域の最寄りの家庭裁判所に遺産分割審判の申し立てをするという選択肢もあります。通常は、審判を申し立ててもまずは調停となることから、いきなり審判の申し立てをするメリットはありませんが、管轄の問題がある場合にはいきなり審判の申し立てをすることも選択肢に入ってきます。

 

■遺産分割調停の相手が外国籍の場合

国際相続(渉外相続)の基本的な話しをまずお伝えすると、日本では『相続統一主義』の考え方のもと、「相続は、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法第36条)」と定められており、被相続人が日本国籍であれば、日本の法律に従って相続が行われます。

 

(相続)

第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

引用元:法の適用に関する通則法第36条

 

しかし、国際相続においては国ごとに考え方が異なり、全ての財産を被相続人の本国法で決めるという相続統一主義と、遺産の種類により拠り所とする国の法律が異なる相続分割主義という2つの考え方があります。

 

ただ、被相続人が日本人で相続人が外国籍の場合には、相続人に外国人が何人いても、被相続人の国籍が日本である以上、日本民法となど日本の法律に従って遺産の相続分割が行われます。相続権の扱いも一緒です。

  • 相続人となる外国人が適法な在留資格を持っていない

  • 日本に在留できない事情がある

  • 婚姻して日本人配偶者のビザを持っていなかった

 

いずれの場合も同様です。

 

■遺産分割調停時に、相手を日本に来させるのは現実的か?

遺産分割調停は月に1回ほどのペースで開かれますので、その度に海外に住んでいる相続人を毎回出席させるのはなかなかハードルが高いでしょう。

 

1人でもいないと調停はすすみませんので、その際は代理人となる弁護士を立ててもらうのが良いかと思います。

 

遺産分割調停は、弁護士に代理人として手続の代理を依頼することができ、その場合には、当事者の出頭に代えて弁護士のみが出頭することができます(もちろん,当事者と代理人が一緒に出頭することもできます。)。

 

弁護士であれば依頼人の代理人資格を有していますから、相手方から調停手続に関する委任を受けていれば遺産分割調停を成立させることもできますし、家庭裁判所に出頭してもらうことも可能です。

 

また、調停が不成立になると遺産分割審判に移行することになりますが、そうなったとしても、相手に弁護士が就いていれば、その弁護士が引き続き相手の代理人として遺産分割審判の手続きを進めることもできます。

 

海外にいる相手に対して調停を申し立てるしかない状況だったとしても、相続においては相続人全員の同意が得られるかが重要ですので、必ずしも調停を申し立てなければいけないわけでもありません。今後遺産分割調停の申立てを検討していることを伝え、弁護士に依頼するように勧めていただくことで、調停をせずに弁護士同士の話合いで解決できる可能性もあります。

 

自分が海外に在住していて今後の遺産分割の進め方について困っているといった場合には、まずは一度、遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。