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胎児に相続権はありますか

妻の妊娠中に夫が若くして亡くなるというケースや,妻の妊娠中に夫と夫の両親が同時に事故で亡くなるというケースの場合,誰がどのように相続するのかが問題になります。

今回は、それらのケースについての相続人と法定相続分をご説明します。

 

1-1.妻の妊娠中に夫が亡くなった場合

民法886条は「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と規定しています。

この「みなす」という表現は,実際には生まれていない胎児を,法律上既に生まれた人とするという意味であり,胎児は相続人として扱われます。

したがって,妻の妊娠中に夫が亡くなってその夫妻には子がいない場合,被相続人(夫)について,法定相続人は妻(配偶者)と胎児(子)の2名ということになります。

相続分は妻が2分の1,胎児が2分の1です。

1-2.懐胎の時期

ここで,「胎児」とは懐胎から出生までを言いますので,懐胎の時期と夫の死亡時期が近接している場合には,その先後によって相続人の人数が変わることになります。

民法772条2項は「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定しており,夫が亡くなって(婚姻の解消)から300日以内に出生した子は,婚姻中(夫の生前)に懐胎したことが推定されますので,婚姻中(夫の生前)の懐胎を否定する証拠がない限り,裁判では婚姻中(夫の生前)に懐胎した事実が認定されることになります。

2.妻の妊娠中に夫と夫の両親が同じ事故で亡くなった場合

民法32条の2は「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と規定しており,同じ事故で複数人の者が亡くなった場合には,裁判では同時死亡を覆す証拠がない限り,同時に死亡した事実が認定されることになります。

また,相続人は被相続人死亡時に生存していることを要するという「同時存在の原則」がありますので,夫の両親を被相続人とする相続について,夫は相続人にならず,胎児が夫に代わって相続人になります【代襲相続】(民法887条2項)。

夫を被相続人とする相続については,上記1で述べたとおり,法定相続人は妻(配偶者)と胎児(子)の2名ということになります。ただし,事故が懐胎前であれば,被相続人には子も親もないことになりますので,法定相続人は妻と夫の兄弟姉妹ということになります。

 

以上のように、胎児は相続人になりますが,懐胎の時期等が問題になることがありますので,お早めに弁護士までご相談下さい。

この記事を監修した人

田阪 裕章

東大寺学園高等学校、京都大学法学部を卒業後、郵政省・総務省にて勤務、2008年弁護士登録。幅広い社会人経験を活かして、事件をいち早く解決します。
大阪市消費者保護審議会委員や大阪武道振興協会監事の経験もあります。